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2011年9月

2011年9月21日 (水)

TPPと二つのアメリカ

日本は、アメリカに逆らえないのか。今、アメリカが突きつけてきている二つの大問題。沖縄基地移転とTPP。TPPについて考える。
官僚は現状維持だから、アメリカの言うとおり動こうとする。経産省はTPP推進派だ。
野田内閣もアメリカの思惑と農家・漁師の人々との軋轢に苦しみつつも、結局、アメリカ追随に動くのだろう。

TPP推進派の主張は、こうだ。
”TPP参加を遅らせることは、輸出品の価格競争で韓国企業などに関税分だけ不利になる。それは大震災で打撃を受けた日本の製造業の競争力をさらに弱めることになる。震災から2カ月を経て、ようやく生産再開にこぎ着けた被災地の中小企業も少なくない。そうした復興への芽を育てるためにもTPPを活用して輸出を後押しするのが筋だろう。
 一方、TPPで被災地の農業や漁業がさらに打撃を受けるという意見が政府の先送り論の根っこにあるが、むしろ再生の好機と考えるべきではないか。津波で打撃を受けた農家や漁師の多くが、新たな借金を重ねて農機具や船を購入することを躊躇(ちゅうちょ)している。高齢化と過疎化も厳しい現実だ。”(SANKEI・EXPRESS 2011.5.19)

震災復興にも、雇用が重要だし、経済が元気にならないと、雇用も生まれない。しかも円高で輸出企業は日本を飛び出し始めている。産業が空洞化し雇用は益々減少する。法人税を減額し、円高対策もして、関税も無くすべきだという。農業や漁業は、もともと競争力がなく、後継者もいない状況に追い込まれている。もともと崩壊寸前だ。この機会に生まれ変わって企業化すべきだ。自分も企業人の一員として本当にそう思っていた。

しかしこれは輸出企業の言い分そのものだ。TPP反対派はいう。
”TPPは単純な自由貿易協定ではありません。アメリカを中心とする多国籍企業、特にウォール・ストリートやモンサントなどのアグリ・ビジネスが、自分たちに都合のよい条件を折り込んだ、きわめて不公平で利己的な「自由貿易協定」にすぎません。”(藤井厳喜「日本人が知らないアメリカの本音」PHP研究所2011)

藤井が指摘するTPPの問題点は、こうだ。
①日本は遺伝子組み換え食品を拒否できなくなる。②モンサントの毒性のある除草剤を拒否できなくなる。③知的所有権が、アメリカの巨大産業にのみ優遇される危険性がある。④公共事業に海外の大手ゼネコンが参入し、アジアの低賃金労働者を送り込むので景気対策にならなくなる。⑤土地や水資源や株価の低い日本企業が外国に買い占められる。⑥医療の国民皆保険制度崩壊のリスクが生じる。⑦日本の労働市場の完全な開放が要求され、外国人労働者が大量流入する。⑧日本が拒否しているポスト・ハーベスト農薬やBSE牛肉の輸入を許可せざるを得なくなる。⑨郵政民営化が貫徹し、ゆうちょ銀行や簡保が海外金融機関に買収され、日本人の金融資産が海外に流出するリスクが生じる。

日本が国民のために守ってきた制度や政策が、アメリカ大企業の利益のために全部撤廃されることになるというのだ。農業だけの問題ではない。関税を全部撤廃ではなく、国益を考えながらの交渉を、FTAやEPAでやればいいのだ。「TPPに加盟しなければ日米関係が壊れる」という恐怖感で、政府は「開国」しようとしているが、TPPはアメリカの総意でもなんでもない。アメリカ政府も強い支援者である大企業の要求を代弁しているだけだから、反対派の方が多いという。特に、ニュージーランドの安い酪農製品の流入を恐れる酪農家や低賃金労働者の流入を恐れる労働組合、自営業者や自作農などを中心とするティーパーティ運動支持者たちが反対している。

藤井によれば、もともとアメリカには、南北戦争以来の弱い連邦政府を志向するリベラルと強い連邦政府を志向する保守の政治的対立があり、これが民主党と共和党の対立のベースになっている。しかし民主党のルーズベルト大統領のニューディール政策以降、強い政府・大きな政府がリベラル、反対派が保守を意味するようになった。経済的にはこれが孤立主義の農業対グローバリズムの多国籍企業の対立でもあったが、民主党もクリントン大統領以降は、ウォールストリートの金融業界寄りになった。そのあとの共和党ブッシュ・ジュニア政権も同じく金融バブル頼みで同じ政策を取った。そしてバブル崩壊の過程で政権を引継ぎ、変化を標榜したオバマ大統領も、現在は来年の再選のために、金融業界とIT業界を結びつけて、第二次ITバブルを仕掛けているという。TPPもそんな流れの中にある。

今や、TPPが一部の多国籍企業の利益にしかならず、国民の大多数を占める中産階級と勤労者の利益を損なうものとして、大企業優先主義反対、グローバリズム反対の声が、リベラルからも保守からも上がっている。
反米ではなくアメリカのTPP反対派と協力してTPPを潰すのが賢い戦略だと藤井はいう。

では経済成長をどうするか。今こそ内需拡大が必要なのではないか。震災復興や新エネルギー開発はいい契機だとは思うが、別の機会に考えたい。

2011年9月19日 (月)

本格太極拳

17日のNHK BSプレミアムのハイビジョン特集「水野美紀 中国・太極拳の聖地を行く」を観た。
子供の頃から少林寺拳法を習い、2年前から太極拳を習っているという彼女が、
太極拳発祥の地、河南省温県陳家溝に師家の19世陳正雷老師を訪ねる。
老師が体系化したという養生功18式を、わずか2日だが直接指導を受けて、
老師の2日間の留守の間に、一生懸命練習し上達した成果を師にみてもらうのだが、
そのできばえは素晴らしかった。

師のように、大地に根が生えたような安定感はないものの、もともと美しい手の動きに
水の流れのような滑らかさと、武術の力強さが加わってその変貌振りは見事だった。
自分の習っているのは健康太極拳でしかも楊式と、全く異なるのだが、学ぶことも多かった。
もう一度基本からやり直して、体の動きや呼吸だけでなく気と体の一体感を持てるところまで、
突き詰めたいという気持にしてくれた。

残念ながら自分はまだ、粘性のある水の中で泳いでいるような感覚をまだ持ったことが無い。
奥が深いにも拘わらず、まだまだ真剣味が、修行が足りないのだと自覚させられた。
それと太極拳はもともと武術なんだという当たり前のことを、思い起こさせてくれた。
それぞれの型の持つ武術的な起源と意味や陳式の型も勉強したいという気持になった。
更に、中医学との関係にも興味を持った。老師の書にも憧れた。やりたいことは一杯あるのだ。

練習の場として映っていた木々に囲まれた境内のような所が、本当に気持よさそうだった。
やはり太極拳は本来は気が溢れた自然の中でやる方が良さそうだ。

2011年9月12日 (月)

利権と洗脳

チョッと分からないことは、ネットで検索するとものすごい量の情報がすぐ集まり、一通りの知識が得られる。非常に勉強になる素晴らしいサイトも沢山ある。しかし、一方でどこまでが本当の情報なのかは良く分からないものもある。十分な裏づけや科学的データに基づく情報もあれば、単なる感想や妄想に近い思いや都合の良い思い込みの情報もウソの情報もある。

新聞でも原発の放射能汚染の発表数値も後から訂正されたり、重要な数値が後から発表されたりする。「混乱を招かぬよう」と称して、「隠す」ことが常態化しているから、政府から色々な放射線量等の数値が発表されても、俄かには信じられなくなっている。さらに、「健康に影響ない」という学者と「影響ある」と言う学者がいる。そもそも基準値なるものが、発表される組織によって違うのはなぜか。誰の言う事が本当なのかと疑心暗鬼になる。

本や新聞を読んでも、テレビのニュースを見ても、対立する意見が溢れていて、どちらの言うことが正しいのか良く分からないことが多い。自然に関する科学的な真実についてであれば、他の多数の人が同じ現象を再現し確認することで正しさが立証されるのだが、「安全」と言うような人間との関係に関する事象では、「誰にとっての」という限定条件が付く。

”「安全に作られている」「安全性を十分に確保している」という「言葉」を鵜呑みにいていることの危険性を認識することが必要であり、道理をある程度は理解したうえで、謳われている「安全」がどのような範囲で成り立つものなのかを知っている必要がある。”(森博嗣「科学的とはどういう意味か」幻冬舎新書2011年)

”いろんな要因をひっくるめて、平均値は出せる。それが統計である。基準値とは、そういう統計から安全を見越して「これくらい」と決められているものである。
基準値を超えているかどうかよりも、今自分がいる場所と、自分の体力と、周囲の状況から、それが「自分にとって危険か安全か」を判断することが、貴方を救うだろう。つまり、それが「科学」なのである。”(同上)

測定値をキチンと捉え、それによって各自が判断することが大事だと言われても、私たちには、精確な数値を知る手段も、それを自分に引き寄せて判断する能力も持たないのが一般的である。ネットやマスコミや本に書いてあることで、どちらの言うことももっともらしいく、どちらを信じたらよいのか分からないという状況は多々ある。どちらが正しいかどうかをどうやって見分けたら良いのか。

そもそも、私たちは無意識に生活していることが多く、全てを意識して理屈で納得して行動しているわけではない。重要なことや迷いがあるときは立ち止まって、状況を考え自分の意志を確認して行動を選択するのだが、思考も意志もどこまで本当に自分のものかと言えば、かなり心もとない。実は親の考え方だったり、恩師の言葉であったり、読んだ本の受け売りだったりということがあるし、いろんな影響を受けているからこそ今の自分がある。

私たちの思考も意志も価値観も、「皆誰かから与えられた情報をいつの間にか自分の考えとしている。すなわち他人によって構築されたものであり、あらゆることに洗脳され、束縛されている。」「自ら望んで選択したと思っていても、それは他人によって構築された、与えられた情報によって、選択させられている可能性が大いにある。」と苫米地は言い切る。(苫米地英人「幻想と覚醒」三才ブックス2010年)

束縛を認め、その束縛の起因を徹底的に分析していくと、そこにはほとんど実体が無いことが分かる。社会の常識とかルールにもほとんど実体が無い。束縛されていると思い込んで、実体が無いものに束縛されている。無意識のうちに、誰かから言われたことを鵜呑みにして守ってしまっている。つまり洗脳されている。

苫米地によれば、物理的現実世界すら五感を通じて感知し、脳が「情報」を認識し、それをもとにまた「情報」を作り出している。従って自分が見ている世界は、脳が作り出している幻想である。あるいは情報空間の中で他人と共有されている共同幻想である。幻想を共同して持たない人には全く違う世界が見えているのである。自分で生み出した幻想も、元を辿れば他人が生み出した幻想であり、その元も又別の他人が生み出した幻想である。神経に伝わった情報が作為的に変えられても、それが嘘だと証明する手立てはないという。その世界は映画「インセプション」のような世界だ。

要するに、人間の脳は、簡単に騙されるということであり、あらゆることに洗脳されているのが常態である。嘘の情報で人を騙そうとする人間にとっては、非常に簡単な話だ。特に、マスメディアは絶好の手段である。特に、テレビは視覚から入って直接感情に訴えるから、洗脳には最適のメディアだ。

マスメディアは、正しい情報であるかどうかよりも、大衆が求める売れる情報を伝える。大衆は考えさせる情報より、面白い情報・楽しい情報を求める。感情に訴えるドラマチックなもの、スキャンダラスなものを求める。大衆は無知ゆえに、一見真実そうな大きな嘘を仕掛けられても分からずに、信じてしまう。

ではその情報が正しいかどうかをどうやって見分けたら良いのか。そのヒントを、
「本当の事を探す」という掲示板サイト「阿修羅」に見つけた。管理人がトップに書いているメッセージがそれだ。
”その情報が 誰によって 流されているか?なぜ今 流されているか?
その事象・情報で だれが利益を得るか?歴史上、その事象の時何があったか?”
もう一つ付け加えるならば、反対意見も良く聴いた上で、どちらが説得力があるか、信じられるかを見極めることだ。少なくとも、自分の利益のために言っていることが透けて見える人は信じられない。

私たちは、マスメディアの伝える情報は疑って掛かる必要がある。そして、その情報は誰にとって利益をもたらすか、誰にとって有利な立場で語っているかを見極める必要がある。人の意見というものは、その人にとって利益になる主張であって、その人にとっては正しい主張であっても、不利益になる人にとっては間違った主張である。すでに、官僚やアメリカ政府がスキャンダルを仕掛けることを知った。

苫米地は、近年、最も世間が踊らされている眉唾情報はエコだと言う。2009年6月に発表されたNASAの公式見解によると、地球温暖化あるいは寒冷化は、太陽の活動などの影響のみで、人間の排出する二酸化炭素は関係していないという。
原子力利権やCO2デリバティブ利権に絡む人間が、仕掛けたことで、日本はCO2排出取引のカモにされただけだと言う。武田邦彦教授の意見と同じである。

この情報も、また単純には信じられないが、大いにありうる話だと思う。

2011年9月 8日 (木)

権力との闘い

2冊の本を読んだ。内容は良く似ている。ともに国家権力の怖さについて。
カレル・ヴァン・ウォルフレン「誰が小沢一郎を殺すのか―画策者なき陰謀」角川書店2011年
副島隆彦×・植草一秀「売国者たちの末路―私たちは国家の暴力と闘う」2009年

私たちは、中国政府の怖さについて話すことがあるが、日本も結構怖いのだということを知った。どこまで本当なのか良く分からないが、全くのでたらめと言うことでもなさそうだ。と言うのは、選挙の季節になると必ず、有力者にスキャンダルが飛び出すからだ。野田新総理にすら外国人献金問題を挨拶代わりに突きつけている。

ターゲットとなるのは一般市民ではなく、利権者たちの虎の尾を踏んだ一部の突出者たちだ。改革しようと言う政治家や既存の秩序を脅かす学者や経営者たち。ある日突然逮捕されたり、スキャンダルとしてマスコミに叩かれたりして、政治家・学者・経営者としての生命を奪われる。日本の検察は、裁判に持ち込むと99.9%の有罪率を誇るという。睨まれたらお仕舞いということだ。検察は政治家の半数はいつでも逮捕できるだけの情報を持っていると言う。日本は民主国家だと思っていただけに一層ショックだ。我々一般市民は、しばしば一緒になってその人たちを非難してきたのだが、マスコミに洗脳されていたからだということになる。

本の中に犠牲者として出てくるのは、まずは小沢一郎だが、他の政治家では田中角栄、橋本龍太郎、中川昭一、鈴木宗男、経営者では江副浩正、堀江貴文、学者では本間正明、植草一秀、元官僚では高橋洋一、企業では野村證券など。火の無いところに煙は立たないと思っていたが、どうもそうではなく事実は曲げられ、時に捏造され情報操作されて、罠に嵌められ陥れられると言ったことがあるようだ。

ウォルフレンは、「画策者なき」と言うが、それはシステムとして出来上がっており、本人たちは当然のことをしているだけと思っているので、自分たちのしていることに気づかないという意味だろう。しかしそれはかなり優しい見方で、副島のいうようにほとんどは陰謀であり表沙汰にはならない権力の行使である。

スキャンダルを仕掛けたり、捏造したりするのは、官僚たち。古賀氏の本にも、官僚にマスコミ操作され失脚させられた長妻昭元厚労相の話が出ていたが、そんなあまいものだけではなかった。財務官僚・国税および検察・警察という最も強い権力を持った官僚が動き、マスコミに偽の情報を流してはターゲットの人格を辱める。法律よりも不文律で都合の悪い人間を勝手に裁くのだ。ここまで来ると、官僚主導どころか官僚による暴力だ。日本のマスコミは独自の取材力が弱いから、横並びで大本営発表をそのまま記事にして彼らに加担する。

しかし官僚は自分たちの利権確保のためにだけ動いているのではない。その背後にアメリカ政府がいて、彼らの内政干渉に手を貸しているのだ。「アメリカの国債を売りたい」と公言した橋本龍太郎、「日本の金を(アメリカに)勝手に使われるのは困る」と言った中川昭一。そして「アメリカ軍は日本から帰ってくれ」と発言した小沢一郎。彼らはアメリカ政府の虎の尾を踏んだ。アメリカは、日本を属国だと思っているから、逆らう人間は許せないのだ。アメリカは日本の官僚を動かして、スキャンダルを仕掛ける。

逆らえないなら、思考停止し外交を放棄してアメリカの言うとおり動いていればいいというのが従来の日本の政治家たち。そして世界から馬鹿にされている。何故逆らえないのか、逆らうと日本を中国や北朝鮮の攻撃から守ってもらえないからだと言う。しかし本当に守ってくれるかどうかは分からない。日本は、国債でも、米軍の基地費用でも相当な金額を貢いでいるにも拘らずだ。悔しいではないか。

野田新内閣が動き始めた。菅内閣の轍を踏まぬようにと、堅実に実行する内閣を標榜している。実行するには自前の政策チームを持つか、官僚を上手く使うしかない。政治家は、方針を立てるが、具体的な政策にすることが出来ない。官僚に騙されないように、細かく指示をしないといけない。そして強い権力を行使して逆らう官僚は切らないといけない。しかしアメリカに逆らえるのか。

野田総理は、増税願望の財務省の影が強い。増税の前にやるべきことが沢山あるが、本当に出来るのか。民主党が事業仕分けで、見直しとしていた公務員宿舎新築工事が着工された。財務省が勝手に凍結解除したものらしい。すでに野田総理も舐められている。公務員組合に逆らえない民主党では、いつまでたっても公務員制度改革が出来ない。

しかし今は緊急時。震災復興も原発処理も待ったなし。政治家が余りにもだらしないからか、国民が余りにも性急なのか、衆参がねじれている。そうである以上、妥協はやむをえない。皆が政策に多少不満でも、苦しんでいる人々のために少しでも身があれば政策を実行することが最優先されるべきだ。

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