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2011年11月

2011年11月27日 (日)

アメリカ経済の破綻

 国際宇宙ステーションから、日本人宇宙飛行士の古川さんが地球に帰還する際、ロシアの宇宙船で帰ってきたことに、アメリカ経済の現状が反映されている。借りた方が安いからだという。昔では考えられなかったことだ。

 リーマン・ショックで、家を失った多数の極普通のサラリーマンたちが公園でテント暮らしをしているのを知った時も衝撃的だったが、アメリカの市民が格差是正のデモをウォール街で行うということも、昔では考えられないことだった。
 今、アメリカでは金持ちトップ1%で、全金融資産の60%、トップ10%で90%を押さえているそうだ。一体どうしてこんな国になってしまったのか。

以下、増田氏の「日本と世界を揺り動かす物凄いこと」からの要約。
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 1979年を境にアメリカは全く違う国になってしまった。それ以前のアメリカは、たしかに平和で豊かで失業率も低く、貧富の格差にしても徐々に縮小するという社会だった。

 アメリカの格差社会への変質は、決して自由競争や市場経済の結果、自然に起きた変化ではない。FED(連邦準備銀行)の金融政策や大手金融機関屁の過保護、独占に優しく中小企業同士の競争にきびしい経済政策など、政治権力を使って富裕者に富の分配を集中させようとした一連の市場経済への国家による介入で達成した「成果」なのだ。

 アメリカ全体から見ればごくごく少数の富豪クラスが陰で糸を引き、表向きには連邦政府や州政府が全米市民への奉仕という建前を掲げながら推進する経済政策。その実、裏に回れば、彼らはせっせと庶民から富を収奪する仕組みづくりに邁進していた。こういうみっともない姿が、1970年代末にはアメリカに定着した。

 きっかけは、1979年のイラン革命に端を発する第二次オイルショックだ。原油価格が高騰したが、国内油田をほぼ掘り尽くしていた車社会のアメリカ社会は輸入をやめることはできず、それ以降アメリカの貿易赤字は年々拡大していった。それとともに、消費者物価は1978年から2004年までの26年間でほぼ3倍になった。医療費は5倍、大学授業料は8倍という大幅な値上がりとなった。また失業率は、常時6~10%の間で推移するようになってしまった。流動性を高めれば失業率は低くなるという建前で流動性を高めた結果、クビを切りやすくなったため、結局失業率を高めただけだった。

2000~2001年、それまでのドットコム・バブルが崩壊し、相場が暴落した。FRB議長のグリーンスパンは、見せかけの繁栄を維持するために、無茶苦茶な貨幣供給の拡大、金利低下、与信のない借り手への大盤振る舞いをした。傷ついたアメリカ経済を救ったのは、「奇跡の金融商品=サブプライム・ローン=いかさま商品」だった。それまでは無関心だった大手金融機関、一流の資産運用会社、年金基金等が飛びついた。そしてサブプライムローン・バブルも崩壊した。

 2010年、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)は、QE2と呼ばれる量的緩和第二弾を決定した。6千億ドルもの米国債を買い上げて、その分の米ドルを市場に供給することになっていたが、その資金の半分は連邦政府の高級公務員たちの給料に消えてしまい、国民一般の生活改善には使われなかった。サブプライムローン・バブル崩壊で傷ついた巨大銀行の連鎖倒産を防ぐ為に使われたのだ。

 要するに政府関係者、金融機関、エリートといわれる人間たちのお手盛りで、自分たちにだけ恩恵が集中するように仕組まれていたのだ。これこそ、我利我利亡者が支配する「強欲資本主義」だ。
 QE2による資金が市場に流れた結果、財政悪化がさらに明らかになり、アメリカの長期金利は1%上昇。日本の長期金利も、一時は連れ高してしまった。このマネーはBRICKsをはじめとした新興国へも流れ込み、食料品、鉄鉱石、金属などの商品化価格を高騰させた。このインフレ圧力を抑制するため、各国は利上げで対抗したため、個人投資や設備投資が減速し、世界の景気が悪化したた。

 リーマンショック以降、景気は冷え込み、失業率は高止まり、繰り出す政策はほとんど全部意図していた効果より副作用の方がきつい。兆の上の京(ケイ)レベルの累積赤字で財政は債務超過。これから100年かかっても返済できないだろう。唯一景気がいいのは、借金のツケをごっそり政府に回して身軽になった大手金融機関やGMのみという有様だ。

アメリカ政府の負債はGDP比率で国債と州政府債券は87%、200%を超える日本よりはるかにまし、ということになっているが、ファニーメイ等の「半官半民」の機関の負債を入れると、263%で日本を超え、これに企業や家計の負債を加えると311%、さらにオバマ大統領が約束した社会保障や医療保障を入れると1000%、GDP10年分を前借してしまっているのだ。

米国債のスポンサーは、1.15兆ドルの中国と0.9兆ドルの日本。どちらかがつっかい棒を外したら、一瞬でアメリカ経済は崩壊する。ただし、中国にはそんな危ないことはできない。唯一、日本だけが無傷とは言わないけれども、致命傷を受けずにアメリカ経済の息の根を止めることができる。しかし、わざわざそんなことをする必要はない。いずれアメリカが勝手に没落していくのを待てばいいからである。

ギリシャの公務員天国ぶりが話題になったが、アメリカは、雇用者数はギリシャ並みだが、給与水準は民間企業より高い。連邦政府の景気刺激策の中身は、連邦政府職員の雇用だけ増やし、州政府や地方自治体の職員数は削減している。

インフレ政策は借金を軽減するので、国や大手企業や金融機関や金持ちには素晴らしい政策だが、物価上昇を伴うので貧乏人をますます貧乏にする格差拡大政策である。

アメリカ国債のデフォルト危機は何とか回避されたが、有力州の地方債が危険レベルにある。税収が貧弱だから危ないのではなく、豊かな税収をあてにして過大な起債をしすぎている。富裕層の地方税負担を拡大しようとしたが、逆に「何時でも出ていく」と脅され税制上の優遇措置を迫られている。

日本は、円高で輸出が不利になるからと騒いでいるが、円高というよりドル安である。市場が、「アメリカは危ない。日本の方が安全だ」と判断しているのだ。ドルが安くなるのは、国力が低下しているということだ。だから円高の方が良いのだ。
日本企業は、中国のように『安かろう、悪かろう』という商品は作っていない。そして、商品を製造するときの材料、エネルギーは大部分輸入しているわけだから、円高になればなるほどメリットがある。付加価値が高く日本以外の国では造っていない中間財・資本財が多いから、円高になろうと、相手国は輸入しなければ始まらない。だから円高をものともせず貿易収支の黒字が続いているのだ。騒いでいるのは、質で差別化ができず、安売りするしかないような企業である。そういう企業を輸出戦略の基軸に据えるということで良いのか?

アメリカは建前上強いドルの復活をアピールするが、本音で輸出倍増をもくろむ以上ドル安、過剰な通貨供給、インフレ策を追求せざるを得ない。しかし過剰な通貨供給は必ず解消するための自然な治癒過程としてデフレをもたらす。デフレになると、日本と違い事実上の独占企業が多いアメリカでは、企業は自社の利益を守るために生産量を削減して、商品価格を高値に維持しようとする。一般大衆は、給料が下がり、物価は高いままという生活水準を大幅に低下させる悲惨な生活を強いられることになる。
 日本では、90年代半ばから、デフレが続いているが、生産削減、経済規模の縮小は起きていないから、実際は何の脅威も実害もない。むしろインフレ時代に金持ちにかすめ取られた富を大衆が取り返すという健全な貨幣現象である。2015年ごろには1ドル=45円という予測も、案外いい線を行っているのではないか。

アメリカの不動産業の未来は明るくない。住宅価格が下落して、自分が払い込んで自分のものになっている分を下回ってしまった人が相当数いる。引っ越したくても家を売っただけでローンを完済できないので引っ越せない。払っても払ってもマイナスになることが分かっているローンを払い続けざるを得ない。こんな状況では住宅産業は少なくとも1世代は再生できないだろう。
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 いわゆるアメリカの新自由主義の政策が、各国に輸出され規制緩和、市場原理主義、競争社会激化、格差社会を世界にもたらした。アメリカのブッシュ政権、日本の小泉政権が積極的に推進した政策である。「官から民へ」や「自己責任」などの言葉も日本の社会に定着した。日本ではデモはそれほど盛んではないが、先日も生活保護を受けている人が、大幅に増えたとのニュースが報道された。

「年収が全国民の年収の中央値の半分に満たない国民の割合」で表す貧困率の統計があるが、税・社会保障給付を含めない再分配前所得でみると、日本は、先進国では20%を越えているドイツ、イタリア、フランスなどに対し、17%と低くなっているが、税・社会保障給付を含めた可処分所得の貧困率では、17.1%のアメリカに次ぎ、15.3%と高く社会保障の手厚い5.3%のスエーデンはともかく、イギリス11.4%やイタリア12.0%を上回っている。(OECD1990s)。要するに、社会保障が遅れているのである。

 政治家のやり方は、自民党であろうと、民主党であろうと、常に富裕層にとっておいしいところだけ先に実施し、一般市民への弊害に対する対策を行わない。規制緩和しかり、TPPしかり、増税しかり。その前にやるべきことがあるはずだ。一般市民にとっては、要注意である。

2011年11月20日 (日)

ユーロ圏の経済危機

 ユーロ圏の債務不履行(デフォルト)危機は、ギリシャにとどまらずイタリアでも顕在化した。スペイン、ポルトガルも危ないと見られている。アイルランドを含めたPIIGSの5カ国はいずれも、大きな借金を抱えているが、財政赤字と経常赤字であり借金を返せなくなりつつある。

 自国通貨がある場合には、政策金利を下げ通貨量を増やしてお金を借りやすくし、景気を刺激する。商品やサービスの輸出より輸入が多い赤字の時、通貨が不足するので供給量を増やすと、通貨が海外で大量に出回り、通貨価値が下がる。通貨価値が下がると輸入品が高くなり消費が減る。さらに海外から借りている借金の負担が増えダメージは大きくなる。しかし輸出が有利になるので、赤字が減り均衡化に向かう。

 ところが、ユーロという統一通貨に乗ることで、財政赤字でも経常赤字でも、政策金利や通貨量の調整は自国ではできず、欧州中央銀行ECBが一元的に行う。従って、公共支出を抑える緊縮財政しかない。しかし関税がなくなったユーロ圏内の貿易で儲けたドイツやフランスが、蓄えたユーロをどんどん貸してくれるので借金には困らない。ユーロ圏全体では、ユーロの価値は下がらないから、海外からも借金ができる。だから歯止めがなく借金がどんどん膨らんだ。これは景気が上向いていたから続いたことである。

 リーマンショックで、世界同時不況の状況になった時から、ユーロの矛盾が一気に吹き出した。貸した金を返してもらえないリスクが高まると、金利を高くしないと貸し手はいなくなる。PIIGSの国債金利は危険水域と言われる7%に近づいた。すでに世界中が貸し込んでいるので、ECBだけでなくIMFも何とか金をつぎ込んで破綻しないようにしているわけだ。

 ドイツはユーロ圏の中では、一番健全だが、アイルランドとスペインの相当な債権を抱えているので、2国のデフォルトが決定的になると大変なことになる。また輸出がGDPの40%もあり、しかもそのうち70~80%がユーロ圏向けなので、ドイツも安全とはいえなくなる。

 EUは、没落傾向にある欧州諸国が連合してアメリカに対抗する経済圏を構築しようとするものであり、イメージ戦略もあって、GDPの25%にまで拡大した。人口比は5%(3億人)で、歴史という観光資源があるだけで、天然資源に恵まれているわけでもない。実体経済で自立可能なのはフランスの農業くらいで、ドイツの工業も先端ではなくなっている。これではじり貧になるのは当然だ。では、なにで食っているのか。

 増田悦佐氏によれば、”勤勉に働かず、汗をかくことを知らず、賢く儲けようと言うずるい人間が金融機関を利用して、何億、何十億円ものボーナスを勝ち取る。こういう金融機関以外は、毎年、確実にやせ細り続けているのがヨーロッパなのだ。”ここでも金融資本主義が浸透し、そのひずみが出ている。
 増田氏が欧州の経済没落の主たる原因にあげているのが、階級社会と縦割りの教育制度の存在だ。エリートが社会を支配すると言う構造ゆえに、エリート中心の教育制度でしかない。そして職人を技術の狭い分野に固定化するために技術の交差がなく、技術の発展を阻害している。
 ”「自分たちがいい暮らしができるのは当然だ。」という選民意識に懲り固まっている。とくに、働きの悪い南欧でその傾向が強い。”
 欧州が経済的には没落しかかっているのに、発言力が強いのは、植民地支配を受けた国々のエリートたちが、宗主国のエリートを崇拝しているからだ。そして彼らを見習って、民衆とかい離した政策を採っていると言う。
 また、地球温暖化論争は、アメリカを攻めるための欧州の戦略である。ドイツの環境機器やフランスの原子力関連を売り込もうとしているのだという。

 しかし、日本ではアメリカのおかげで戦後、教育や社会の平等化と大衆化が徹底されたから、多能な技術者の層が厚く、落ちこぼれも少なく、エリートとの格差も小さい。故に、技術が強い。環境技術でも決して欧州に負けてはいない。

 これからのアジアを中心とした世界で、日本の役割は大きい。経済協力や技術協力という切り札を持っているのだから、米中の顔色伺いでなく米中およびアジアをリードして欲しいものだ。
 
 ”いつの時代でも、市場が国を選別し、国の盛衰を決める。軍事力でも政治力でもなく、経済力、技術力、金融力がパワーの源なのだ。放漫経営が企業を倒産させるように、国家の放漫経営は財政を破綻させ、べらぼうな資金調達コストを市場から要求され、国家そのものを破綻させてしまうのである。”(増田氏)
 このことを日本は忘れるべきでない。

2011年11月13日 (日)

イギリス・フランス旅行

顧客企業への協力のため、会社払いの優雅な研修視察ツアーに行かせてもらった。30代から60代までの男ばかりの26人の団体だが、1週間前の説明会で初めて顔を合わせた人ばかり。ロンドンに3泊、パリに3泊、機中2泊の旅。4、5人いた高齢者の中で上から2番目。

ロンドン、パリは何回か来ていたので、今回の楽しみは、ロンドンから150キロのシェークスピアの故郷であるストラトフォード・アボン・エイヴォンとパリから360キロの今日本で人気のモン・サン・ミッシェル。やはり、二つとも素晴らしかった。

両方とも、バスで郊外を長時間走ったが、田舎の風景が日本とは違い、山らしい山がなくなだらかな丘陵や果てしなく広がる平地に畑が広がるのが印象的だった。イギリスは国土が日本の3分の2だが、ほとんど山がないので使える面積は日本より広い。ちなみに人口は日本の2分の1の61百万人。フランスは日本の1.6倍で、人口は2分の1強の65百万人。山は国境付近にしかないので、ゆったりしている。ちなみに食糧自給率は07年で日本が40%に対して、英国65%、フランス111%である。

ストラトフォードの街の建物は、絵本に出てくるように可愛らしかった。観光で食べているだけに、きれいに整備されている。

モン・サン・ミッシェルは、島全体が花崗岩でできた建物のような不思議な島で、イタリアの地方の城塞都市のようだったが、圧巻なのはむしろ周辺の海。果てしなく広がる引き潮の時の砂浜。その都度、海水の残り方によって違った模様になるという。日本人に人気で夏は観光客の30%、冬は50%が日本人だという。さすがに欧州の都市を席巻している中国人はここにはいない。

都市で改めて感じたのは、古い歴史的建造物を観光資源として大切に使っていること。幅広い歩道、ちょうど黄葉になった大きな並木、至る所にある緑の芝生が印象的な大きな公園が美しかった。街としては、新しい建築の目立つロンドンの方が印象に残った。

リバークルーズではテームズ川よりセーヌ川の方が素晴らしかった。セーヌのバトー・ムッシュは、船からの強烈なライトアップで周辺の建物を浮かび上がらせて走るという凄いアイディア。さすが見せる技術では日本は足元にも及ばない。それは暗い街の中で美しく浮かび上がるショーウインドウのディスプレイにも感じられた。今、経済的に苦しんでいるといっても、歴史の蓄積に基づく豊かな生活と成熟した文化の厚みはやはりすごい。

しかし、ロンドンとパリを結ぶユーロスターは駅も含め余り感動的ではなかった。日本の新幹線の方がよほどきれいだ。古い建物の前に縦列している車もまた、都市景観を壊しており、観光資源と近代的な生活とが必ずしもマッチングしていないことを物語っている。

メンバーの皆が困っていたのは、食事のまずさとウオッシュレット。特にイギリスの食事は、余り味がなく塩と胡椒で調節するという質素さ。フランス料理は味が濃い分ましだが、飽きる。食事にしてもトイレにしても、改めて日本の良さを実感した。

名前と顔が一致し話ができるようになった頃にお別れとなったが、いろんな人との出会いの機会にもなった。集合に遅れた人、迷子になった人、忘れ物をした人など、いろんな人がいたが、事故も病気もなく無事に帰ることができ、まずはホッとして、時差ボケの調整に入った。

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