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2012年4月

2012年4月28日 (土)

世界経済にまつわる数多くのウソ

苫米地英人「経済大国なのになぜ貧しいのか?」(フォレスト出版 2012)を読んだ。

 日本は官僚社会主義国家だという主張は、スキナー氏の「略奪大国」と同じだが、もう少し詳しく論じている。それは官僚の無駄遣いの巣窟である特別会計の問題を取り上げている点だ。特別会計については、詳細データがないから、野口氏もここまでは踏み込んでいない。政治家すら手が付けられない領域だからだ。著者はCIAのデータから推測する。これによると、特別会計予算は総額約210兆円あり、一般会計予算約90兆円よりはるかに多い。

 日本は、国民が汗水流して働いて支払った保険金や貯金した金である210兆円もの金を官僚が勝手に使って、まだ足りないから税金をもっと出せというような国だということだ。だから、国民が豊かになれるわけがないというのがこの本の主張である。政府は増税の理由は社会保障費の増加だというが、国民が払っている社会保険金の運用実績もあきらかにしないのだから、信用できるわけがない。

 またメディアの流す情報も信用できるものではない。原発問題と同じように世界経済に関しても、メディアが流す情報には常にウソが存在する。円高、デフレ、復興増税、財政再建、GDP,TPP,投資などの情報には隠された背景がある、と著者は言う。

メディアは決して中立ではなく、権力者の言いなりになっている御用学者や官僚によって仕組まれた情報流す。権力者とは各国の政府だけでなく、その上に世界を動かしている多国籍企業や巨大銀行、さらに世界的な投資家が君臨していると、著者は説く。このピラミッドのような権力構造を著者は世界経済のカースト制度と呼ぶ。

  世界経済は、お金でお金を儲ける金融資本主義に変わり、経済主体は家計や企業に代わり投資家が経済の中心になってきた。その投資家のトップに国際金融資本が君臨している。彼らがマネーストックを操作することで、不況と好況の波、戦争やバブルが作り出されるという。彼らは国際金融機関を動かして経済のルールを変える力を持っている。日本の不況も彼らの都合で演出されているという。日本政府も官僚も日銀もその仕組みの上に乗っかっているとすると、これを変えるのはほとんど不可能にも見える。

 そのような事実を踏まえた上で、彼らの動きを予測しうまく動くしかない、と最後は言っているようで、何だか情けない。ただ、日本は世界の他の国に比べ相対的に経済が堅調だから国力が増大しており、円高を生かして世界進出すれば日本の経済圏を広げることが出来る。このチャンスを生かすべきだという。しかしどこかで国際金融資本とぶつかることになるだろう。彼らと戦うには世界の世論を味方にするしかない。世界進出は日本のためだけであってはならないということだ。
 以下、要約。

■経済学の破綻

・経済学が破たんしたのは、「投資家」という大きな経済主体を無視してきたから。
・企業、家計、政府による投資や消費の予測をしても、投資家心理によって経済が変わる

・需要と供給が価格を決定するという理論は、完全情報の存在を前提に成り立っている。

・しかし完全情報は存在しないし、人間は合理的判断だけで購入を決めるわけではない。
・製品価格は、為替変動で変わるが、企業はその都度購入先を変えることはしない。
・日本は経済が強いから円が買われ円高になり、原材料が安く買え製品も安くできる。

・通貨量は国が適正に管理するという前提も崩れた。欧米は量的緩和をしたが日本はせず

・信用は国の管理から離れ、通貨から株式・債券・デリバティブ・クレジットと膨張。
・通貨や信用が増大してもインフレにならないのは、お金がモノでなくお金に向かうから

・お金がお金を稼ぐ経済では、景気を左右するのは金融市場を動かす投資家心理。
・世界の貿易決済額は14兆円、短期投資マネーは560兆円、デリバティブは4京円の規模
・投資家の心理の変化が、世界経済の方向性を決める。投資家の心理を読むこと。

■デフレ論のウソ

・バブル崩壊後、デフレ=通貨価値上昇が続くのはBIS規制で市中の通貨量抑制のため。
・通貨価値が上がれば人はお金を使わず経済規模は縮小、企業は生産縮小、消費縮小。

・本来インフレもデフレもない方がいい。インフレになると儲かる人たちがいる。
・1929年の恐慌の原因は第一次大戦。戦争遂行のため大量の貨幣が供給されインフレに。
・米国は1914年、民間銀行連合のFRBに通過発行権を奪い取られた国。
・ケネディのように、自国通貨を政府が発行しようとすると殺される。
・ドル固定相場のブレトン・ウッズ体制は、各国に外貨準備を要求。世界を支配した。
・IMFは、外貨不足で通貨危機に陥った国にドルを貸し付ける組織。
・ドルは国債と引換にFRBが政府に貸付。発行されればされるほどFRBは儲かる。
・いくらでもドルを刷れる米国は、それで戦費を調達。世界にドルが氾濫した。
・世界がインフレになった原因は、ドルのばらまきと疑似通貨の爆発的な増加。

・BIS規制は日本の銀行を狙い撃ち。米銀行はBIS逃れの証券化金融商品を事前準備。
・物価の下落率が為替の上昇率より小さいので実質物価は上昇。
・新興国のインフレに引っ張られ、物価は上昇中。特に資源、エネルギー。
・日銀が量的緩和をしても企業融資でなく国債の買い入れだけ。景気は良くならない。
・疑似通貨でマネーストックが増加している時代に、日銀の量的緩和は意味がない。
・新しくGDPの分だけマネーストックを増やせばいい。

■財政破綻論のウソ

・日本国債は円建てでほとんど国民が所有しているのでデフォルトはしない。
・復興はGDPを増やすのに、増税で賄おうとしたためデフレが悪化した。
・増税で民間経済が悪化し税収減になり財政破綻しそうなギリシャの二の舞。
・GDP分のマネーストックを増やす日銀引き受けの復興特別国債の発行が正解。

・景気が回復し国債が売られ、金利が上がって利払いが増えると政府は困るので不況容認。
・日独米の国債はデリバティブ取引での損失の追い証である根っこの元本になる。
・デリバティブ市場が拡大する限り、日本国債の需要はなくならない。
・デフォルト説は投資家が日本国債のいい出物を拾いたい為に流したブラフ。
・長期資金の安定的な貸付期間がなくなったことが民間活力をそいでいる。
・資金不足故に民間の工場・設備の復旧が遅れている。

■財政再建論のウソ

・国民のために金を使ったための財政悪化だから、今度は国民が負担というのはウソ。
・そもそも90年代からのゼロ金利政策は、個人の金利分を企業負債の軽減に回した。
・一般会計90兆のうち借金50兆は異常だが、消費税で賄うと5%+25%で30%必要。
・財政が健全になっても国民経済が成り立たない。どこかに大きな穴が開いている疑い。
・年金基金や郵貯などを財源とする特別会計は210兆円もあるが、国会で審議されない。
・運用を任されている国民の年金基金や郵貯を国債に切り替え湯水のように使った。
・官僚はこれを施設建設等に使うだけでなく自分たちの天下り先にプールしている。
・年金基金を食い潰してしまったから、厚労省は積立方式から賦課方式に切り替えた。
・官僚は民間のように運用の責任を取らないだけでなく増税=略奪で埋めようとする。

・日本は旧ソ連よりひどい官僚社会主義国家。自分たちの利権のために国民を略奪。
・国民純負担率はスウェーデンより高い。社会保障給付が少なく、政府が使う金が多い。
・特別会計というアンタッチャブルな闇。官僚が政治家に触らせない、教えない予算。
・特別会計問題を暴こうとした民主党の石井紘基議員は殺されてしまった。
・典型的なのは外為特別会計で毎年30兆円が米国債に使われる。アメリカへの上納金。
・政治家もアメリカが怖いから、財務省のせいにして「分からない」で通すひどい国。
・所得税をゼロにし消費税を25%にした方が、アングラ経済から徴収でき税収は上がる。

・非合法な地下経済や脱税だけでなく、宗教法人、学校法人、外資系企業も払うべき。
・借金を返済する方法は、民間企業ならいくらでもアイディアが出る。官僚は増税のみ。

■円高悪玉論のウソ

・日本は貿易立国だから、円高だと日本経済は大変というのは昔の話。今は内需大国。
・日本のGDP570兆円のうち、輸出は67兆円、輸入が60兆円。円高の影響は7兆円
・貿易収支が赤字になり、所得収支(技術、特許、投資)で稼ぐ成熟国型になった。
・対外純資産も、資産560兆、負債310兆で差引250兆円ある。うち米国債は88兆。
・日本経済が強いから円が強い。円の購買力が上がることは、日本が豊かになること。

・投資先がないから消極的な円高という言い方は、国民に円安が基調と思わせるため。
・国力を支えるのは識字率。日本は世界一。通貨が高くなるのは当然。1ドル30円にも。
・日本は円の購買力を生かし、世界中に進出し、自らの経済圏を広げるチャンス。

・企業が海外に出ていく最大の理由は、円高ではなく法人税実効税率。
・輸出品の原価の半分は輸出先の流通原価。国内原価も円高で下がる。
・内需国だから仕事がなくなることはないが、海外に出るチャンス。
・かつてのように卑下することなく、自信を持って日本流を広めればよい。

・米国債は目減りするが、元々上納金の領収書みたいなもの。塩漬けするしかない。
・円高はよいことなのに、騒ぐのは国民を不安にさせ増税を受け入れさせるため。

■投資論のウソ

・投資は、大きな流れをとらえることの出来る人しか儲けることが出来ない。
・世界経済や金融の仕組みの全体像を理解し、長い時間軸で相場の動きを予見すること
・2011年上半期に外国人投資家は、ユーロ崩壊の予見にもかかわらず日本の株を買った。

・大きな流れでは、日本の国力は強く円高は進むので、日本の株が底値と判断したから。

・3月末に外国企業買収の決済で円を売る結果円安傾向が出るが、その後は円高が進む。
・円は30円になってもおかしくない、日本はかつてないほど国力を増大させている
・日本人の大半は日本の未来が暗いと思い込んでいるが、トンネルから抜け出る日は近い
・EUの金融危機が回避されても、インフレ抑制の通貨引き締めや国の重債務返済の大増税

・世界経済は今後長いトンネルに入り、途中EU破綻によりリーマン以上の危機の可能性。

・EU危機で金融の逆回転が起こるサインは、国債に投資しているヘッジファンドの倒産。

・お金でお金を稼ぐ経済が拡大する以上、バブルと崩壊の危機を繰り返すことは宿命。
・世界の支配者の陰謀というより、彼らが資産を倍増させようとするのに好都合な環境。

■経済成長論のウソ

・日本が90年以降の低迷の中、EUはユーロ導入と東欧というフロンティア出現でバブル。

・東アジア共同体構想は、欧州のような背景や政治的動機がないと不可能。
・TPPは郵便事業開放などのアメリカの要求を一方的に受け入れるだけ。
・中国、ロシアがTPPに参加することはアメリカが拒否。中国製品が米市場を席巻。

・成長率は加速度。日本は1%でも元々GDPが大きいからネットでは大きく成長。
・中国は、元ドル相場を固定して元安にしているから特殊。一人当たりGDPは小さい。
・GDPが下がっても人口が減れば経済的には困らない。一人当たりGDPが落ちなければ。
・困るのは税収が減り利権を維持できなくなる官僚。官僚が幻想の経済成長論を仕掛る。
・総務省は、個々の商品価格から下落傾向を作り出しデフレであると結論づける誤り。
・デフレはGDPの増減とマネーストックの増減で見るべきもの。人口増減の方が問題。
・震災後のデフレは、マネーストックの不足と心理不安による消費の落ち込み。

・統計等はそれを作る人の意図や投資家心理の推測等によって変わるので意味が薄れた。

・経済指標や経済統計にも、作る人を支配している権力者の意向が入るということ。
・日本政府は米政府の意向を忖度。米政府は多国籍企業、その上に国際金融機関、さらにその上に欧米巨大銀行頭取、そしてトップにはそのオーナーたちがいるというカースト制

■洗脳経済

・インフレ、デフレはモノの価値と通貨の総量の関係。モノの価値=物価は不変。
・インフレ、デフレとは通貨量により相対的に通貨の価値が上下すること。
・欧銀行家は保有する金の価値を不変にするため金本位制を作った。
・ここから通貨が不変でモノの価値が変動するのがインフレ、デフレという幻想が発生。

・好況、不況の原因はマネーストック増加、銀行の貸出増加であることを隠した。
・一人当り生産性は年単位では変化しないので、GDPの変動要因は人口。人口統計が重要
・GDPの伸びに合わせてマネーストックを増やして行けばデフレから脱却できる。

・マネーストックを増やすには日銀がお札を刷り、銀行経由で国債を引き受けること。
・日銀がマネタリーベースを増やしても銀行が貸出しを増やさないと景気は良くならない

・日本の銀行の蛇口をBISが決めている。そのため銀行は国債を買うしかない状況。
・国民が預金しても、企業にお金が回るのではなく、国債を通じて政府特別会計に入る
・日本の長期デフレ、震災復興の遅れ、日本国債の低格付けはBISが仕掛けたもの。
・低迷する欧米の国債を買わせるため、世界の資金が日本への流入するのを阻止している

■中央銀行の歴史

・通貨は12世紀英国のゴールドスミスの金預かり証として生まれ、銀行が誕生した。
・通貨発行権を一旦国王に奪われたが、1649年クロムウェルのイギリス革命で奪還。
・イングランド銀行以降、欧米の中央銀行はすべて民間銀行。日銀も。
・米国通貨発行権を確立する米国独立戦争でも双方がイングランド銀行から金を借りた
・戦後米国に通貨を発行する中央銀行が作られたが、ヨーロッパの資本によるもの。
・米国経済を顧みない中央銀行を政府は潰してしまった。1913年FRB誕生まで77年間空白
・銀行家たちは通貨発行権を失うと南北戦争を起こし、双方に金を貸した。
・大統領がいうことを聞かないと不況を起こした。
・それでもいうことを聞かないと大統領を暗殺してきた。

・19世紀末、米国の資本主義が発展したが、マネーストックは縮小、1907年株が大暴落。

・これを救ったのが米国最大のJ・P・モルガン銀行。政府許可なしでモルガンドルを発行

・ここから中央銀行の必要性が再認識され、大銀行家が集まって1913年のFRB設立に至る
・中央銀行を作るために、不況を起こし、学者に論文を書かせ、モルガンドルを発行した

・FRB設立と同時に、国債を買ってもらうための原資として違憲だった所得税を合法化。
・大銀行家は、ロシア革命でも、ソ連崩壊でも、1、2次世界大戦でも双方に貸し付け
・1次大戦後、FRBはマネーストックを大幅縮小し、1929年の大不況を作りだした。

・彼らはマネーストックを増やして好況を演出。権利や資産を担保に入れさせ金を貸す。

・次にマネーストックを絞り、不況にして企業を倒産させカタにとった担保を奪い取る。

・巧妙に経済の真実を隠し、あたかも彼らが不況を救ってくれる救世主のように洗脳する

・超長期的な社会基盤の変化を除き、好況不況が5、10年で繰り返すのは彼らの演出。

・日本政府も日銀も、国債金融資本の軍門にくだり、彼らの望むように動いている。
・今、BIS第3次バーゼル規制によりマネーストックの蛇口が閉められようとしている。
・これからも大不況や戦争が十分起こりうる。

■大きな歴史の転機

・日本は社会保障の増大につき合って増税を繰り返せば、蟻地獄のようになる。
・景気回復のために公共事業は必要だが、最早、総花的な国土開発や箱モノではない。
・将来の日本の姿をしっかり描いて何をすべきかを決めるべきだがまだ描けていない。
・TVの放言・暴言で溜飲を下げずに、政治家や官僚、日銀等に怒りを持ち続けること。
・経済は永遠に悪い方向に進むことはない。必ず反転する。
・国力のある日本は、上昇への歴史的チャンスをものにするために全精力を集中すべき。

2012年4月19日 (木)

自然死を目指す

中村仁一「大往生したけりゃ医療とかかわるな」幻冬舎新書2012を読んだ。

副題に「『自然死』のすすめ」とあるように、医療を出来るだけ避けて穏やかな自然死を迎えようという内容であり非常に共感した。また医者なのに医療を否定する勇気ある発言に感銘を受けた。すぐ医者だ薬だと騒いで来た身には少々辛いかもしれないが、出来る限りこの生き方を実践したいと思った。

「死」という自然の営みは、本来、穏やかで安らかだった。それを医療が濃厚に関与することで、より悲惨で、より非人間的なものに変貌させたと主張する。

がんでさえも、何の手出しもしなければ全く傷まず、穏やかに死んでいく。繁殖を終えた年寄りには、「がん死」が一番のお勧めとのこと。ただし、「手遅れの幸せ」を満喫するためには、「がん検診」や「人間ドック」などは受けてはならない、と言う。

そして年寄りの最後の大事な役割は、出来るだけ自然に「死んでみせる」こと。「逝き方」は「生き方」であり、今日の生き方が問われるのだ。以下、要約。

■病を治すのは薬ではなく自然治癒力

・病気やケガを治すのは、医者でも薬でもなく身体が持っている自然治癒力である。
・熱・鼻水・咳・痛みなどの症状は早く治そうとする身体の反応、警戒サインである。
・少々の病気やケガは、医者にかからなくても薬を飲まずに放っておいても治る。
・傷口の汁には傷を治す成分が含まれている。消毒せず湿ったままにしておくのが正解。

・薬は、症状を抑えるが、同時に自然治癒力も抑えるので治るのが遅くなる。

・自然治癒力を妨げる異物や大きな膿の塊の除去は必要。
・自然治癒力を発動させる栄養状態と安静が必要。これを妨げる痛み等への対症は良い。

・ホルモン不足は自然な老化。痛み軽減のための補充は良いがダラダラ続けないこと。
・一度切り取られたり、放射線で火傷を負わされた臓器は二度と元に戻らない
・医療には「絶対こうなる」「100%確実」はありえない。

■自然死では痛みや苦しみを感じない

・自然死とは餓死。脳内モルヒネ・麻酔作用・意識レベル低下で夢うつつのいい気持ち。

・痛みや苦しみもなく、不安や恐怖や寂しさもなくまどろみのうちに、あの世に移行。
・鼻チューブや胃瘻や水分点滴は、この幸せムードで死んでいく過程をぶち壊す。
・「できるだけの手を尽くす」は「できるだけ苦しめ、たっぷり地獄を味わわせること」
・介護についても死にゆく過程の邪魔をしない、無用な苦痛を与えないことは鉄則。
・北欧のように食べなければ下げてしまい、三宅島のように水だけ与えて静かに看取る。
・医者の使命感や家族の罪の意識が、受け付けない食事や水を身体に強制し苦しめる。
・回復や生活の質の改善が見込めない場合は、「そっとしておく」のが一番の思いやり。
・飲み込めない、飲み込まない年寄りは、もう寿命が来ている。点滴も酸素吸入も不要。

・水も飲まず、点滴もしなくなってから、死ぬまでの老衰死日数は7~10日。
・死に目に会えるよう延命してもらうのは、自己満足優先の「鬼のような家族」

■自然死のために普段からトレーニング

・医者のいうことを聞くより、自分の身体に聞く方が間違いがない。
・快・不快も警告サイン。気持ちのいいことは身体に良い。不快なことはやめる。
・「年のせい」を認め、無理をしないこと。
・本来の自然死を「看取らせること」が年寄りの最後の努め。信念と覚悟と協力が必要。
・欲しくない時に無理やり押し込まれないためには、普段から食べさせてもらわない。
・救急車で病院に運ばれないためには、痛いのしんどいのと口にも態度にも出さない。
・毎日痛い痛いでは家族もたまらない。今日は?と聞かれるのも嫌。親しき仲にも礼儀。
・救急車に乗ることは現在の医療で出来ることは何でもして欲しいという無言の意思表示

■手遅れのガンで死ぬのが最も幸せ

・死ぬのはがんに限る。じわじわ弱ること、最後まで意識清明で身辺整理ができること。

・がんでも3人に1人は痛まない。痛むのは放射線や抗がん剤による反動の可能性が高い。
・がんの予防法は、生活習慣病の予防法と同じ。最大の危険因子は加齢。
・「がんは2人に1人がかかり、3人に1人は死ぬ」。高齢化が進めばほぼ100%になる。
・繁殖を終えたら死ぬのが自然界の掟。年寄りのがんは、あの世からのお迎えの使者。

・早期発見しても幸せではない。検査の苦痛、薬漬け、再発への怯え、ストレス。
・手遅れのがんが幸せ。痛まないから病院に行かず手遅れになる。
・猛毒の抗がん剤は数か月の延命効果があっても、副作用で身体がヨレヨレになる。
・高齢者のがんは天寿だと考え、攻撃的治療も無意味な延命治療も行わず完全放置する。

■如何に死ぬかを考え生き方をチェック

・病気は医者に、苦悩は誰かに治してもらおうというひ弱な人間が日本中に溢れている。

・苦悩は本人がきちんと向き合い、時の癒しで乗り越えるしかない。心のケアは不要。

・お金的にもベッド数不足からも病院や施設で死ぬことが不可能な時代。
・どこで誰にどのように介護されて死ぬかを前もって考えておく必要。
・人生の節目で命の有限性を思い、その日までの生き方の軌道修正をする生前葬をすべき

・生前葬は、エンディング・ノートのビジュアル版。
・今、大切にしなければならないことは何か、今後どのように生きるべきかを考える。
・人工呼吸器、経管栄養、人工透析など具体的な医療措置への事前指示書が重要。

・老いには寄り添ってこだわらず、病には連れ添ってとらわれず、健康には振り回されず、死には妙にあらがわず、医療は限定利用を心がけることが大切。

■老いを受け入れて生きる

・医者にとって、年寄りは大事な「飯の種」。老いを病にすり替える。
・検診で病気探しをしたら、医者の餌食になるだけ。
・基準値は健康な若者の95%が収まる範囲。年寄りははずれて当然。
・健康はこういう生き方をするためにこの程度必要と言う手段で目的ではない。
・生活習慣病は体質もあるので基本的に治らない、治せない病気。人生の同伴者のようにつき合うしかない。
・年寄りは、繁殖を終えれば死ぬという自然界の”掟”に反して、他の生き物の命を奪って生かされている存在。それなりの生き方をすべき義務と責任がある。
・あたりまえが、実は不思議でありがたいことと噛みしめ感謝するのが、60過ぎの「還り」の生き方の基本。
・仏教は生きるための指針を説いている宗教。

 すでに医者から高血圧だの、高脂血症だのと言われたくさんの薬を飲まされている。薬を飲んで血圧を下げても、食生活や運動不足の生活習慣を改善しなければ良くなったとは言えないことは明らかだ。加齢により血圧も高めになるので、145、95程度ならほとんど問題ないはずだ。医者の餌食になっているという気がする。

今度病院に行くまで、思い切って薬を飲むのをやめてみようと思う。そのためには、問題のありそうな生活習慣を改める必要がある。思い当たるのは、塩分と脂肪の取りすぎ、運動不足、たまにとはいえ飲み過ぎ、少々食べ過ぎによる体重オーバー。間食も増えたのは問題か。それにしても何か、人生がつまらなくなりそうだ。ほどほどに始めよう。

2012年4月14日 (土)

年金事務所訪問

3月末に年金機構から4月に3月分の老齢基礎年金の支払いをしますとの通知が来た。3月はまだフルに勤めていたわけだし、65歳になる誕生日は3月1日だから3月分が出るというのも変だ。たぶん何かの間違いなのだろうと思っていた。

ところが4月に入って、年金支払い予定金額の通知が来た。基礎年金のみで厚生年金分がほとんど支払い中止となっている。3月末に退職しているのになぜだかわからない。しかも、かみさんが以前確認してきた金額と合わない。そこで非勤務日を利用して年金事務所に3つの疑問を確認に行ってきた。

10人の相談員がいたので、順番はすぐやってきた。相談員は正直そうな感じのいい人だったが、送られてきた通知の数値とコンピューターから打ち出したデータの数値が合わず、根拠がわからないので確認してくると奥に引っ込んでしまった。相談員ですら良くわからないことを、何の説明もなく送ってくるのは本当に不親切だ。

4月に振り込まれるのは、やはり3月分の基礎年金で間違いではなかった。65歳になったのは誕生日の前日とみなされるのだそうだ。民法で規定されているとのことだ。65歳になれば在職していても基礎年金分は支払われることになっている。

ところが、3月末に退職した場合には、4月1日退職扱いになり、4月はこれまでと同じ在職扱いだという。年金の年間支払い総額が確定するのは7月頃でそれまでは概算だ。したがって以前の数値と違うのは当然。だが、4月に受け取った数字とコンピューターの数字が違うのは、別の理由だった。4月から物価スライドで年金給付金が0.3%カットになるが、通知は3月に作られたので以前の数字が使われたという。何ともややこしい話だった。
いずれにしても、数字が確定したら再度通知が来るそうだ。

消費税の増額と同時に、大幅な年金カットの時代がやってくることになるだろう。
日本にとって必要なことだとは思いつつも、これからの自分の生活設計にとっては憂鬱なことだ。高齢者継続雇用を70歳までにするなどの収入源を確保する政策も同時に進めてほしいものだ。

2012年4月 8日 (日)

介護に関する知識

介護に関する知識

●和田先生の「人生を狂わせずに親の『老い』とつき合う」から大変多くのことを学ばせてもらった。自分の親の介護に関しても、不安が一杯だったが、頭の中が整理できた。以下、要約。

●高齢者のための医者の選び方
・高齢者は病気のデパート化になるので、一人で総合的に診られる医者が必要。
・正常値にこだわる医者は高齢者を総合的に診ることが出来ないので向かない。
・入院中にリハビリしないと寝たきりになる。介護保険が使えないのでヘルパーは自腹。
・食事・薬・環境変化でなる「せん妄」という意識障害を認知症と間違う医者がいる。
・たくさん薬を処方する医者は、製薬会社から金をもらっている可能性がある。
・薬の副作用は、高齢者ほど、そして一度に多種の薬を飲むほど出やすい。
・介護のブログで経験者の知恵を参考にした方が良いが、個人差の大きさを考慮する。
・遠距離では、かかりつけの医者、相談できるケアマネ、面倒見てくれる近親者が大事。

●介護保険の賢い使い方
・要介護度によりサービスの種類と量が限定。要支援1・2、要介護1~5までの7段階。
・支援や介護を受けられる疾患は、病気でも、けがでも、老衰でもOK。
・自己負担は1割だが、限度超過分は全額自己負担。家族形態の縛りもない。
・介護保険の財源の50%は保険料、国25%、県12.5%、市12.5%と公費が50%
・財政赤字の各自治体は、負担割合が大きい介護保険の給付額を極力抑えようとする。
・認定を受けたら、サービスを決めるケアプランを作るケアマネージャーの選択が必要
・特定の介護業者ばかりを紹介するケアマネは避けた方がいい。
・保険料は40歳以上の人は天引きされる。年金からも天引き。全国平均月4160円。
・介護保険の被保険者はその市町村に住んでいることが条件。住民票不受理の発生も。
・介護サービスの充実はその市町村の財政赤字に直結するので、介護は票にならない。

●介護資源の知識
・親を子供が引き取るのは困難。特養も満杯。ヘルパー頼みか介護型有料老人ホーム。
・後者では保険から施設に25万。本人は2.5万。生活費含め17.5~22.5万で可能。
・問題は入居金が300~500万と高いことだが、親の家を売り払えば可能。
・頭金不要のグループホームは認知症対応のみだが、月15~20万円程度で入居可能。

●親の財産管理
・悪質な詐欺事件も初期認知症の高齢者が狙われる。親の認知症への備えが必要。
・認知症の親はホームに入る必要性を理解できず嫌がる。成年後見制度を使うべき。
・元気なうちに話し合う。借金・権利書・保険証書・通帳・印鑑・カード・遺言書等。

2012年4月 5日 (木)

介護崩壊時代

和田秀樹「人生を狂わせずに親の『老い』とつき合う」2012 (講談社+α新書)を読む。

  日本の社会福祉は、財政難から大幅な見直しが必須となっており、介護制度の見直しも例外ではない。自分にとっても、介護の問題はかなり身近で切実な問題になってきた。どう考えたらよいのか、どうすべきなのか、手がかりを求めてこの本を手に取った。

●医師不足による「医療崩壊」よりも、「介護崩壊」の方が深刻だと和田氏は言う。

・介護疲れによる自殺、心中、虐待、殺人が増えている。
・公的介護サービスや施設の不足による「介護うつ」の患者は10万人程度いる。
・介護のために離職する人も年間15万人になり、02年からの総数は56万人になる。
・特に06年の介護保険法の改正で、在宅サービスの制限がきつくなってから増えた。
・09年で要介護者は475万人、特養の待機者は46万人だが、総定員数は41万人しかない。
・日本は65歳以上が94年に14%を超え高齢化社会、07年に21%を超え超高齢化社会に。
・要介護者が急増するのは85歳以上。介護者が不足する介護地獄が今後10年で本格化。

●高齢化が進む一方で、介護する子供の数が減るので問題がどんどん深刻化するのだ。

                                       
・急激な少子化は団塊世代以降。出生率は47年4.54、57年2.04、07年1.03と下降。
・介護する子供の数が減り要介護者が増えるから、まともな在宅介護は出来なくなる。
・2人兄弟の時代は実家に誰も残らず、地方の老親を都市から通いで介護する事が増加。
・収入の低い非正規労働者の独身者が増加。これから親の介護どころではない現実。
・施設介護を拡充すれば解決するのに、不足のため保険料を払っても受けられない矛盾。

●施設介護は、なぜ遅れているのか。それは政府や厚労省が施設介護ではなく、在宅介護を進めているからだ。「在宅介護は日本の美風」とか、「親を施設に入れるのは忍びない」、「嫁や娘が介護するのは当たり前」という価値観は洗脳によるものだという。なぜならば、日本にそのような伝統はないからだ。

・戦前の日本は、結核などで先進国で最も短命な国。平均寿命は50歳以下。50年で61歳。
・長寿化でアルツハイマーが増えたが、医療技術の進歩で高齢者を死なせなくなった。
・老衰死を受け入れず、在宅介護が必要になる人を医療が、大量に作り出した。
・特養でも手厚すぎる医療をするので寝たきり期間が長く、施設不足の原因にも。
・高齢者が少なかった90年代半ばまでは、「社会的入院」と言われ病院が施設介護。
・高齢者が増え医療財政が赤字化。国は介護施設を作らずに社会的入院だけを削った。
・介護保険で介護医療を定額化することで、病院が「社会的入院」を避けたため崩壊。
・介護を担う女性や身内や地域社会のバックアップもなくなった。
・まだ超高齢社会に入って5年ほどなので、両親とも存命で「老老介護」が可能だった。
・15年位前には、定年後生きている期間は10~15年。退職金は年収の3~5年あり安泰。
・現在は定年後20年は生きるが、退職金は年収の1年分程度。有料老人ホームは無理。
・家族が切羽詰った状況で在宅介護をするほかなくなったのは、ここ10年か15年のこと。

●在宅介護から施設介護に切り替えるべきだ。介護サービスの見直しも急務である。

・無理な在宅介護より、低料金の特養に預けるのが絶対にいい。しかし数が足りない。
・施設をもっと作り、官制ワーキングプアの介護労働者の待遇改善に金を使うべき。
・厚労省は医療より介護に金を使うべき。医療費の自然膨張より予防医学的に介護を。
・特養は立派すぎるので、コストを抑え数を増やすべき。
・高い料金で空いている個室より大部屋で効率を上げ、数を増やすべき。
・デイサービスが日中だけなのも、専業主婦が介護する前提のため。非現実的な制度。
・介護の社会化によって中年の女性が仕事を辞めなくてもいいシステムを作るべき。

●国や自治体が施設介護を進めないのは、在宅介護の方が出費が少なくて済むからだ。介護問題を解決するには、財政や労働力不足の問題を解決しなければならない。

・労働力として65歳以上の活用は必要。在宅介護はマンツーマンなので労働力を減らす。
・在宅介護中心だと、労働力不足で国全体の生産性が低下し経済の活力が失われる。
・要介護者は1千万人をこえ、介護難民も1千万人を超えることになる。
・超高齢社会を放置すると、さらに高齢化が進む。年金より深刻な介護。
・今の日本の最大の問題は、介護問題の放置という恐ろしいことを平気でやっている点。
・日本は世界でも珍しい国。10年後、20年後への想像力を働かせない。

●財政難の大きな原因である高齢者の社会福祉。財政を考えると増税・保険料値上げ・自己負担率アップと社会福祉サービスの縮小以外に方法はない。勿論その前に、あらゆる無駄を排除して、少しでも財源を増やさねばならない。和田氏の言うように、医療より介護を手厚くすることや、介護施設・介護サービスの見直しも必要だ。
 また、鈴木亘氏が言うように、介護サービスの価格自由化・参入規制撤廃、介護労働者の賃金引上げが必要である。

 一体誰がそんな政策を進めてくれるのだろう。近い将来に介護地獄がやってくることは明らかなのに、圧力団体のある医療に比べ介護はほとんど無視されている。残念ながら、難しい問題は対処療法で済ませ、どうしようもなくなるまで放置するのが、この国の悪い癖のようだ。

●今日の日経新聞に、雇用と賃金の記事が出ていた。
パートや派遣社員などの非正規労働者の割合は、92年末の2割から11年末には36%(東北3県を除く)に上昇したという。雇用構造も、製造業等の第2次産業が減少し、第3次産業が増えたが、その半分は医療・福祉分野である。しかもこの分野はパートの比率が高いため、平均賃金が大幅に低下した。
 介護にとって、問題は深刻になるばかりである。

2012年4月 3日 (火)

シニアライフ初日

  4月から非常勤になり、今日は初めての非勤務日。つまりシニアライフの初日。朝はいつもと同じ時間に起きて、新聞をゆっくり読んだ。なにか解放感よりも虚無感の方が強い。
カミさんから「今の気分は?」と聞かれたので、「何か穴が開いたような感じ」と答えると、「散歩にでも行く?」と気を使われてしまった。最初の日は大事だから、前から図書館に行こうと考えていたのだが、予定を変更した。図書館はちょっと離れた場所にあるから片道20分程度の散歩にもなるし、読みかけの本を読んで感想をまとめることが出来ればちょうどいいと考えていたのだ。

  昼飯を食べがてら、わざわざ歩いて20分ほどの遠い店に行った。川沿いの桜はまだほとんど蕾だったが、一部分では咲き始めていた。道すがら住宅の庭の樹木に赤や黄色や白の花が咲いていて、春に来たことを告げていた。曇ってはいたが気分は上々。

  ゆったりと食事を済ませ、今度はこれまた20分ほど歩いて地元の八百屋さんで買い物。そのあとはその近くの図書館に寄った。二人で借りる本を見つけて、館内の喫茶店でお茶を飲みながら30分ほど本を眺めたり、おしゃべりしてのんびりした。贅沢な時間だった。帰り際、これからお世話になるだろう学習室を覗いた。平日の昼過ぎだから空いていた。図書館の中にはいろんなところに椅子が置いてあるが、高齢者もかなりいて、多くは居眠りをしていた。

  そこからまたしばらく歩いて市の武道館に立ち寄った。15年ほど前に良く来ていた柔剣道場やアスレチックジムのあるところだ。新しいプログラムがないかチェックしたが、激しい運動は無理だし、その他に特に興味をそそるものはなかった。アスレチックも退屈なので途中でやめてしまった経緯がある。やはり、太極拳の時間を増やした方が良さそうだ。
家路に向かう途中で、風が激しくなり雨がパラついてきた。夕方から夜中にかけて、台風並みの暴風雨が来るとの予報は知っていたが、少し早くなったようだ。急いで家に戻ると同時に雨が激しく降ってきた。11時頃から3時頃までの長く充実した散歩だった。

  電車が止まったとの市からの通報がカミさんの携帯に入った。テレビを見ると、もう駅に人が溢れていて大変な状況だった。帰宅が困難になるとの予想で皆早目に仕事を切り上げていたのだ。今日会社に行っていたら、帰宅困難者になるところだった。なんとも因縁のある不思議な1日。

2012年4月 2日 (月)

「ミッション8ミニッツ」を観る

DVDで映画「ミッション8ミニッツ」を観た。
ダンカン・ジョーンズ監督、ジェイク・ジレンホール主演のSFアクション映画。
シカゴ近くで列車が爆発され乗客が全員死んでしまう事故の犯人捜し。
主人公は、他人の体を借りて犯人探しのミッションを与えられるある人物の意識。
事故に巻き込まれて死んでしまうが、意識はミッションの司令塔に引き戻される。
そこで、過去の知識と新たなミッションを得て、同じ経験をもう一度繰り返す。与えられる時間はいつも8分間。そして次第に犯人を絞り込んでいき、最後は犯人を見つけるというミステリー。

ちょうど、コンピューター上でゲームをしているように、失敗してはリセットしてもう一度初めからやり直す。次は少しうまくなって先に進むがまた失敗してリセットするというプロセスにそっくりだ。きっと脚本のヒントはそこにあるのだろう。どこまでがリアルの世界でどこからが幻想の世界か、判然としなくなってくる。意識にとっては、全く違いがないからややこしい。

人生もこんな風に何度でも途中からやり直せたら、大成功は間違いなしだから、ある種の夢の世界だ。列車の中と司令塔の間を時間を無視して行ったり来たりするだけなのだが、繰り返すたびに心理状態や、車内の見え方が変わっていく様が実に面白い。何が起こるか知っているわけだから、過去の出来事を変えることもできるのだ。タイムマシーンで歴史を変えることが出来るかという話に似ている。

単なるアクションでも、ミステリーでもなく、知的ゲームのようで久し振りに楽しめた。

2012年4月 1日 (日)

インフラ崩壊

昨夜のNHKテレビでシリーズ日本新生「インフラ危機を乗り越えろ」を観た。

橋や高速道路・生活道路や上下水道管が老朽化し始めているが、財政難で未補修・未更新のまま放置されているため、事故が起こったあるいは起こりそうな例を挙げていた。
藤井聡が指摘していた問題だが、京都市の水道管破裂事故や首都高速のコンクリート崩落のような具体的な事例が問題の深刻さを強く印象付けた。

日本は、60、70年代に人類史上最速でインフラを整備したのだが、50年経ちその老朽化が始まった。また、バブル崩壊後の90年代に景気対策として不要不急のたくさんの箱モノが作られたが、この維持管理が出来なくなっている。不景気や人口減少で利用者は増えず施設は軒並み赤字となった。そもそも必要だから作られたわけではないとはいえ、廃止しようとすると利用者からの反対運動がおこり、売却・譲渡しようとしても買い手は現れない状況だ。

インフラにしても、箱モノにしても作れば、後の維持管理・補修更新の費用のことを考えておかねばならないのは当然だが、当時は景気が良くなれば費用は何とかなると思っていたようだ。しかし公共投資の効果は表れず、政府の負債だけが積み上がった。その後、新設の公共投資は減り続け、2010年には増え続けていた補修更新の費用と入れ替わったが、国は今なお新設には補助するが、補修更新には補助しない。

今、日本は急速な人口減少時代に入っている。2010年に1億2500万人の人口は、2050年には9500万人になると見られている。利用者が減りおまけに財政難だから、インフラ投資する場所を集約せざるを得ない。それがコンパクトシティの考え方だ。米国のヤングスタウン市がモデル都市だと東大の小泉秀樹准教授が話していた。日本では富山市が最先端の試みをしているという。コンパクトシティ実現の鍵は、集約する計画地から外れた地域の住民をいかに説得するかである。特に高齢者は移住に難色を示すから、根気よく住民に説明していくしかない。

更新しきれないインフラは計画的に削減していくしかないのだが、自治体の8割は老朽化の実態すら把握していないという。しかも、仮に老朽化の実態が分かったとしても住民には知らせないという首長が多かった。誤解を招き不安にもたらすからだという。だがそれはまさに原発事故の際に政府がとった行動と同じであり、余りにも住民を馬鹿にしている。事実はいずれ明らかになるし、事実が分かった時、取り返しのつかない不信感を招くことになる。

 会津若松市では水道事業の民間委託を進めるため、徹底的な市民への説明を行った。水質の安全性に不安を持つ市民に、市は安全性を根気よく説明し、最終的に市が責任を持って安全性を担保すること、市の職員を監視係として残すことで納得を得た。

 長野県下條村では生活道路の補修を求めた住民に対し、村長は何度も何度も詳しい数字を示しながら財政難をきちんと説明し、いくつかの選択肢を示した。その結果、村民は自分たちで汗を流して道路の補修を行うことを選択したという。村長は、地域に即してきちんと考えれば、画一的ではないオリジナルな解決が必ずあるという。そして身の丈のインフラでコストを抑えた分を、家賃の安い村営住宅建設に回したので、若い人が集まり子供の出生率が高まったという。

 市民は正しい情報を与えれば、同じ危機感、同じ目標を持って自分たちから動き出す。市民が受益者としてだけでなく、負担者としての意見を持ち、さらには街の経営者として動き出すことが期待される。その契機となるのは財政破綻で街が崩壊してもいいのか、あるいは借金して次世代につけを回していいのかと問うことである。これは国でも県でも市町村でも、企業でも言えることだ。

日本人は、これまで成長の波に乗って、調子に乗って先のことを考えずに、キリギリスのように借金で豊かな生活を先食いしてしまったのかも知れない。或る市民の方が話していたように、これからは不便さを受け入れ、身の丈に合った生活を送らなければならないのだと思う。だからこそ、官僚たちの無駄遣いは徹底的になくさなければ納得できない。

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