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2012年4月28日 (土)

世界経済にまつわる数多くのウソ

苫米地英人「経済大国なのになぜ貧しいのか?」(フォレスト出版 2012)を読んだ。

 日本は官僚社会主義国家だという主張は、スキナー氏の「略奪大国」と同じだが、もう少し詳しく論じている。それは官僚の無駄遣いの巣窟である特別会計の問題を取り上げている点だ。特別会計については、詳細データがないから、野口氏もここまでは踏み込んでいない。政治家すら手が付けられない領域だからだ。著者はCIAのデータから推測する。これによると、特別会計予算は総額約210兆円あり、一般会計予算約90兆円よりはるかに多い。

 日本は、国民が汗水流して働いて支払った保険金や貯金した金である210兆円もの金を官僚が勝手に使って、まだ足りないから税金をもっと出せというような国だということだ。だから、国民が豊かになれるわけがないというのがこの本の主張である。政府は増税の理由は社会保障費の増加だというが、国民が払っている社会保険金の運用実績もあきらかにしないのだから、信用できるわけがない。

 またメディアの流す情報も信用できるものではない。原発問題と同じように世界経済に関しても、メディアが流す情報には常にウソが存在する。円高、デフレ、復興増税、財政再建、GDP,TPP,投資などの情報には隠された背景がある、と著者は言う。

メディアは決して中立ではなく、権力者の言いなりになっている御用学者や官僚によって仕組まれた情報流す。権力者とは各国の政府だけでなく、その上に世界を動かしている多国籍企業や巨大銀行、さらに世界的な投資家が君臨していると、著者は説く。このピラミッドのような権力構造を著者は世界経済のカースト制度と呼ぶ。

  世界経済は、お金でお金を儲ける金融資本主義に変わり、経済主体は家計や企業に代わり投資家が経済の中心になってきた。その投資家のトップに国際金融資本が君臨している。彼らがマネーストックを操作することで、不況と好況の波、戦争やバブルが作り出されるという。彼らは国際金融機関を動かして経済のルールを変える力を持っている。日本の不況も彼らの都合で演出されているという。日本政府も官僚も日銀もその仕組みの上に乗っかっているとすると、これを変えるのはほとんど不可能にも見える。

 そのような事実を踏まえた上で、彼らの動きを予測しうまく動くしかない、と最後は言っているようで、何だか情けない。ただ、日本は世界の他の国に比べ相対的に経済が堅調だから国力が増大しており、円高を生かして世界進出すれば日本の経済圏を広げることが出来る。このチャンスを生かすべきだという。しかしどこかで国際金融資本とぶつかることになるだろう。彼らと戦うには世界の世論を味方にするしかない。世界進出は日本のためだけであってはならないということだ。
 以下、要約。

■経済学の破綻

・経済学が破たんしたのは、「投資家」という大きな経済主体を無視してきたから。
・企業、家計、政府による投資や消費の予測をしても、投資家心理によって経済が変わる

・需要と供給が価格を決定するという理論は、完全情報の存在を前提に成り立っている。

・しかし完全情報は存在しないし、人間は合理的判断だけで購入を決めるわけではない。
・製品価格は、為替変動で変わるが、企業はその都度購入先を変えることはしない。
・日本は経済が強いから円が買われ円高になり、原材料が安く買え製品も安くできる。

・通貨量は国が適正に管理するという前提も崩れた。欧米は量的緩和をしたが日本はせず

・信用は国の管理から離れ、通貨から株式・債券・デリバティブ・クレジットと膨張。
・通貨や信用が増大してもインフレにならないのは、お金がモノでなくお金に向かうから

・お金がお金を稼ぐ経済では、景気を左右するのは金融市場を動かす投資家心理。
・世界の貿易決済額は14兆円、短期投資マネーは560兆円、デリバティブは4京円の規模
・投資家の心理の変化が、世界経済の方向性を決める。投資家の心理を読むこと。

■デフレ論のウソ

・バブル崩壊後、デフレ=通貨価値上昇が続くのはBIS規制で市中の通貨量抑制のため。
・通貨価値が上がれば人はお金を使わず経済規模は縮小、企業は生産縮小、消費縮小。

・本来インフレもデフレもない方がいい。インフレになると儲かる人たちがいる。
・1929年の恐慌の原因は第一次大戦。戦争遂行のため大量の貨幣が供給されインフレに。
・米国は1914年、民間銀行連合のFRBに通過発行権を奪い取られた国。
・ケネディのように、自国通貨を政府が発行しようとすると殺される。
・ドル固定相場のブレトン・ウッズ体制は、各国に外貨準備を要求。世界を支配した。
・IMFは、外貨不足で通貨危機に陥った国にドルを貸し付ける組織。
・ドルは国債と引換にFRBが政府に貸付。発行されればされるほどFRBは儲かる。
・いくらでもドルを刷れる米国は、それで戦費を調達。世界にドルが氾濫した。
・世界がインフレになった原因は、ドルのばらまきと疑似通貨の爆発的な増加。

・BIS規制は日本の銀行を狙い撃ち。米銀行はBIS逃れの証券化金融商品を事前準備。
・物価の下落率が為替の上昇率より小さいので実質物価は上昇。
・新興国のインフレに引っ張られ、物価は上昇中。特に資源、エネルギー。
・日銀が量的緩和をしても企業融資でなく国債の買い入れだけ。景気は良くならない。
・疑似通貨でマネーストックが増加している時代に、日銀の量的緩和は意味がない。
・新しくGDPの分だけマネーストックを増やせばいい。

■財政破綻論のウソ

・日本国債は円建てでほとんど国民が所有しているのでデフォルトはしない。
・復興はGDPを増やすのに、増税で賄おうとしたためデフレが悪化した。
・増税で民間経済が悪化し税収減になり財政破綻しそうなギリシャの二の舞。
・GDP分のマネーストックを増やす日銀引き受けの復興特別国債の発行が正解。

・景気が回復し国債が売られ、金利が上がって利払いが増えると政府は困るので不況容認。
・日独米の国債はデリバティブ取引での損失の追い証である根っこの元本になる。
・デリバティブ市場が拡大する限り、日本国債の需要はなくならない。
・デフォルト説は投資家が日本国債のいい出物を拾いたい為に流したブラフ。
・長期資金の安定的な貸付期間がなくなったことが民間活力をそいでいる。
・資金不足故に民間の工場・設備の復旧が遅れている。

■財政再建論のウソ

・国民のために金を使ったための財政悪化だから、今度は国民が負担というのはウソ。
・そもそも90年代からのゼロ金利政策は、個人の金利分を企業負債の軽減に回した。
・一般会計90兆のうち借金50兆は異常だが、消費税で賄うと5%+25%で30%必要。
・財政が健全になっても国民経済が成り立たない。どこかに大きな穴が開いている疑い。
・年金基金や郵貯などを財源とする特別会計は210兆円もあるが、国会で審議されない。
・運用を任されている国民の年金基金や郵貯を国債に切り替え湯水のように使った。
・官僚はこれを施設建設等に使うだけでなく自分たちの天下り先にプールしている。
・年金基金を食い潰してしまったから、厚労省は積立方式から賦課方式に切り替えた。
・官僚は民間のように運用の責任を取らないだけでなく増税=略奪で埋めようとする。

・日本は旧ソ連よりひどい官僚社会主義国家。自分たちの利権のために国民を略奪。
・国民純負担率はスウェーデンより高い。社会保障給付が少なく、政府が使う金が多い。
・特別会計というアンタッチャブルな闇。官僚が政治家に触らせない、教えない予算。
・特別会計問題を暴こうとした民主党の石井紘基議員は殺されてしまった。
・典型的なのは外為特別会計で毎年30兆円が米国債に使われる。アメリカへの上納金。
・政治家もアメリカが怖いから、財務省のせいにして「分からない」で通すひどい国。
・所得税をゼロにし消費税を25%にした方が、アングラ経済から徴収でき税収は上がる。

・非合法な地下経済や脱税だけでなく、宗教法人、学校法人、外資系企業も払うべき。
・借金を返済する方法は、民間企業ならいくらでもアイディアが出る。官僚は増税のみ。

■円高悪玉論のウソ

・日本は貿易立国だから、円高だと日本経済は大変というのは昔の話。今は内需大国。
・日本のGDP570兆円のうち、輸出は67兆円、輸入が60兆円。円高の影響は7兆円
・貿易収支が赤字になり、所得収支(技術、特許、投資)で稼ぐ成熟国型になった。
・対外純資産も、資産560兆、負債310兆で差引250兆円ある。うち米国債は88兆。
・日本経済が強いから円が強い。円の購買力が上がることは、日本が豊かになること。

・投資先がないから消極的な円高という言い方は、国民に円安が基調と思わせるため。
・国力を支えるのは識字率。日本は世界一。通貨が高くなるのは当然。1ドル30円にも。
・日本は円の購買力を生かし、世界中に進出し、自らの経済圏を広げるチャンス。

・企業が海外に出ていく最大の理由は、円高ではなく法人税実効税率。
・輸出品の原価の半分は輸出先の流通原価。国内原価も円高で下がる。
・内需国だから仕事がなくなることはないが、海外に出るチャンス。
・かつてのように卑下することなく、自信を持って日本流を広めればよい。

・米国債は目減りするが、元々上納金の領収書みたいなもの。塩漬けするしかない。
・円高はよいことなのに、騒ぐのは国民を不安にさせ増税を受け入れさせるため。

■投資論のウソ

・投資は、大きな流れをとらえることの出来る人しか儲けることが出来ない。
・世界経済や金融の仕組みの全体像を理解し、長い時間軸で相場の動きを予見すること
・2011年上半期に外国人投資家は、ユーロ崩壊の予見にもかかわらず日本の株を買った。

・大きな流れでは、日本の国力は強く円高は進むので、日本の株が底値と判断したから。

・3月末に外国企業買収の決済で円を売る結果円安傾向が出るが、その後は円高が進む。
・円は30円になってもおかしくない、日本はかつてないほど国力を増大させている
・日本人の大半は日本の未来が暗いと思い込んでいるが、トンネルから抜け出る日は近い
・EUの金融危機が回避されても、インフレ抑制の通貨引き締めや国の重債務返済の大増税

・世界経済は今後長いトンネルに入り、途中EU破綻によりリーマン以上の危機の可能性。

・EU危機で金融の逆回転が起こるサインは、国債に投資しているヘッジファンドの倒産。

・お金でお金を稼ぐ経済が拡大する以上、バブルと崩壊の危機を繰り返すことは宿命。
・世界の支配者の陰謀というより、彼らが資産を倍増させようとするのに好都合な環境。

■経済成長論のウソ

・日本が90年以降の低迷の中、EUはユーロ導入と東欧というフロンティア出現でバブル。

・東アジア共同体構想は、欧州のような背景や政治的動機がないと不可能。
・TPPは郵便事業開放などのアメリカの要求を一方的に受け入れるだけ。
・中国、ロシアがTPPに参加することはアメリカが拒否。中国製品が米市場を席巻。

・成長率は加速度。日本は1%でも元々GDPが大きいからネットでは大きく成長。
・中国は、元ドル相場を固定して元安にしているから特殊。一人当たりGDPは小さい。
・GDPが下がっても人口が減れば経済的には困らない。一人当たりGDPが落ちなければ。
・困るのは税収が減り利権を維持できなくなる官僚。官僚が幻想の経済成長論を仕掛る。
・総務省は、個々の商品価格から下落傾向を作り出しデフレであると結論づける誤り。
・デフレはGDPの増減とマネーストックの増減で見るべきもの。人口増減の方が問題。
・震災後のデフレは、マネーストックの不足と心理不安による消費の落ち込み。

・統計等はそれを作る人の意図や投資家心理の推測等によって変わるので意味が薄れた。

・経済指標や経済統計にも、作る人を支配している権力者の意向が入るということ。
・日本政府は米政府の意向を忖度。米政府は多国籍企業、その上に国際金融機関、さらにその上に欧米巨大銀行頭取、そしてトップにはそのオーナーたちがいるというカースト制

■洗脳経済

・インフレ、デフレはモノの価値と通貨の総量の関係。モノの価値=物価は不変。
・インフレ、デフレとは通貨量により相対的に通貨の価値が上下すること。
・欧銀行家は保有する金の価値を不変にするため金本位制を作った。
・ここから通貨が不変でモノの価値が変動するのがインフレ、デフレという幻想が発生。

・好況、不況の原因はマネーストック増加、銀行の貸出増加であることを隠した。
・一人当り生産性は年単位では変化しないので、GDPの変動要因は人口。人口統計が重要
・GDPの伸びに合わせてマネーストックを増やして行けばデフレから脱却できる。

・マネーストックを増やすには日銀がお札を刷り、銀行経由で国債を引き受けること。
・日銀がマネタリーベースを増やしても銀行が貸出しを増やさないと景気は良くならない

・日本の銀行の蛇口をBISが決めている。そのため銀行は国債を買うしかない状況。
・国民が預金しても、企業にお金が回るのではなく、国債を通じて政府特別会計に入る
・日本の長期デフレ、震災復興の遅れ、日本国債の低格付けはBISが仕掛けたもの。
・低迷する欧米の国債を買わせるため、世界の資金が日本への流入するのを阻止している

■中央銀行の歴史

・通貨は12世紀英国のゴールドスミスの金預かり証として生まれ、銀行が誕生した。
・通貨発行権を一旦国王に奪われたが、1649年クロムウェルのイギリス革命で奪還。
・イングランド銀行以降、欧米の中央銀行はすべて民間銀行。日銀も。
・米国通貨発行権を確立する米国独立戦争でも双方がイングランド銀行から金を借りた
・戦後米国に通貨を発行する中央銀行が作られたが、ヨーロッパの資本によるもの。
・米国経済を顧みない中央銀行を政府は潰してしまった。1913年FRB誕生まで77年間空白
・銀行家たちは通貨発行権を失うと南北戦争を起こし、双方に金を貸した。
・大統領がいうことを聞かないと不況を起こした。
・それでもいうことを聞かないと大統領を暗殺してきた。

・19世紀末、米国の資本主義が発展したが、マネーストックは縮小、1907年株が大暴落。

・これを救ったのが米国最大のJ・P・モルガン銀行。政府許可なしでモルガンドルを発行

・ここから中央銀行の必要性が再認識され、大銀行家が集まって1913年のFRB設立に至る
・中央銀行を作るために、不況を起こし、学者に論文を書かせ、モルガンドルを発行した

・FRB設立と同時に、国債を買ってもらうための原資として違憲だった所得税を合法化。
・大銀行家は、ロシア革命でも、ソ連崩壊でも、1、2次世界大戦でも双方に貸し付け
・1次大戦後、FRBはマネーストックを大幅縮小し、1929年の大不況を作りだした。

・彼らはマネーストックを増やして好況を演出。権利や資産を担保に入れさせ金を貸す。

・次にマネーストックを絞り、不況にして企業を倒産させカタにとった担保を奪い取る。

・巧妙に経済の真実を隠し、あたかも彼らが不況を救ってくれる救世主のように洗脳する

・超長期的な社会基盤の変化を除き、好況不況が5、10年で繰り返すのは彼らの演出。

・日本政府も日銀も、国債金融資本の軍門にくだり、彼らの望むように動いている。
・今、BIS第3次バーゼル規制によりマネーストックの蛇口が閉められようとしている。
・これからも大不況や戦争が十分起こりうる。

■大きな歴史の転機

・日本は社会保障の増大につき合って増税を繰り返せば、蟻地獄のようになる。
・景気回復のために公共事業は必要だが、最早、総花的な国土開発や箱モノではない。
・将来の日本の姿をしっかり描いて何をすべきかを決めるべきだがまだ描けていない。
・TVの放言・暴言で溜飲を下げずに、政治家や官僚、日銀等に怒りを持ち続けること。
・経済は永遠に悪い方向に進むことはない。必ず反転する。
・国力のある日本は、上昇への歴史的チャンスをものにするために全精力を集中すべき。

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