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2012年11月

2012年11月22日 (木)

デフレ脱却に何が必要か

 自民党の安倍総裁が、デフレ脱却のために日銀法改正をしてでも日銀に大胆な金融緩和をさせる、と息巻いている。建設国債を発行して無制限に日銀に引き受けさせ、10年間で200兆円の公共事業を行って景気を浮揚させるというものだ。選挙対策だとは思うが、本気だとしたらちょっと怖い。償還の裏付けのない国債の大量発行は、国債の価値を一挙に下げ、所有者の一斉投げ売りを誘発する。それはハイパーインフレを引き起こす可能性がある。デフレ下だから大丈夫だというのだが、急激なインフレは止めようがなくなるから、日本は一挙に破綻する可能性があるのだ。

 日経のコラム大機小機(121122)で、この動きに釘を刺している。デフレの根本的原因は需要不足であって、日銀の金融緩和の不足ではない。日銀はすでに他国に比してもかなりの緩和策を行っているが、効果がないのは安倍総裁の言うように「緩和策の小出しのせい」ではなく、需要不足に対する政府の財政政策が何もなされていないからだという。

 需要不足の原因は、少子高齢化の進展、総人口の減少、グローバル競争の激化である。この状況を打破するためには、次のような政策が重要だとしている。

  ①徹底した規制緩和により医療・介護や農業などの分野で新たな成長機会を創出すること  
  ②TPP参加をはじめ強力な自由貿易協定(FTA)戦略の推進により、成長する世界の需要を取り込むとともに、対内直接投資の大幅拡大をうながすこと
  ③財政再建と社会保障制度改革を推進し、「持続可能な社会保障」への信頼を回復すること

 私は、TPPはアメリカが対日輸出を伸ばすために日本の関税を撤廃させようとするための戦略だと考えるので、TPP推進には賛成ではない。しかし自由貿易は必要だ。日本の隣には急成長するアジア、需要が急増するアジアがある。日本はアジアとの自由貿易を伸ばすべきだし、日本企業はどんどんアジアに進出すべきだと考える。そのために政府が果たすべき役割や企業に支援すべきことはたくさんある。

 ただ、だらしないのは政官だけでなく、日本企業も元気がない。中国やアジアへの進出は行われているものの、それは工場のコストを下げるために止む無くという感じが強い。最近は、中国やアジアが市場として大きく成長した結果、需要を求めて進出する企業も増えている。しかし、欧米に比べるとかなりの遅れを取っているようだ。

 日本は20年前から経済成長が止まってしまった。豊かさの中で、すっかりハングリー精神を失ってしまったようだ。経済成長の一つの要因はイノベーションであるが、昔から日本企業は効率型・改善型イノベーションは得意だが、破壊型イノベーションが不得意だと言われる。要するに日本企業は需要を作り出す力が弱いのだ。顧客の創造はビジネスの要諦だ。日本の企業家は、いかに需要を作り出せるかが問われている。

 同じ今日の日経の記事「ネット人類未来」に次の二つの印象的な言葉があった。

  「破壊的イノベーションは職を生み、効率的イノベーションは職を奪う」
                          クレイトン・クリステンセン(米ハーバード大教授)

  「今後の世界は2種類の労働者しかいなくなる。クリエーターとサーバー(奉仕者)だ。」
                          トーマス・フリードマン(米コラムニスト)

2012年11月 3日 (土)

2012年10月の鑑賞メーター

2012年10月の鑑賞メーター
観たビデオの数:7本
観た鑑賞時間:803分

■容疑者 室井慎次 [DVD]
被疑者が警察官の事件の捜査本部長だった室井警視正が、被疑者を追い詰め死に至らしめた容疑で逮捕されてしまう。真実を追求しようとする室井を辞めさせようとする様々な力がある。金で動く弁護士、不祥事の隠ぺいを図る警察上層部、警察庁と警視庁との派閥争い。犯人との戦いと言うより、真実を隠そうとする金や権力との戦いの色合いが強い。だから今回の室井慎次は、怒りで黙りこくる場面が多い。映画としては今一つ盛り上がりに欠けるが、社会の実態はこんなものだと感じさせるには十分である。
鑑賞日:10月27日 監督:君塚良一
http://video.akahoshitakuya.com/cmt/1804711

■インビクタス / 負けざる者たち [DVD]
27年間の投獄生活から一転、90年に南ア共和国初の黒人大統領になったマンデラにまつわる実話。アパルトヘイトの象徴だった白人中心のラグビーに、白人と黒人の和解の機会を見つけた大統領が支援して、弱小チームが見事強豪に再生し、国民も宥和したという話。本当の試合を見ているような気持ちで応援し、勝利に涙する自分がいた。いつの間にかマンデラと同じ気持ちになっていた。憎み合っていたら国が崩壊するという危機感の下に、黒人の反撃を許さずに不屈と寛大な心で信念を貫いたマンデラのリーダーシップに脱帽。
鑑賞日:10月25日 監督:クリント・イーストウッド
http://video.akahoshitakuya.com/cmt/1801372

■ジャックはしゃべれま1,000(せん) [DVD]
口先男の出版代理人ジャックは、庭に突然生えた樹木とつながってしまい、ジャックが喋ると葉が落ち、全部落ちると貴方は死ぬとスピリチュアル指導者に言われる。喋れないが故に、生活は滅茶苦茶になり、仕事も家庭も失う。荒唐無稽な喜劇と思って観ていたが、死を覚悟してからのジャックの心のこもった言葉や顔つきが良かった。「静寂の中にいると真実が聞こえる」「愛は心で伝えるもの」という指導者の助言で気付いたのだ。非常事態は人間に、普段見えない大切なことや心の奥のワダカマリに気付かせてくれる。
鑑賞日:10月21日 監督:ブライアン・ロビンス
http://video.akahoshitakuya.com/cmt/1792369

■踊る大捜査線 THE MOVIE [DVD]
「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてんだ」という有名なせりふが聞け満足。会議室の幹部に対する皮肉に満ちているが、幹部コースの室井と現場の青島の友情がこの映画を引き締めている。二人ともそれぞれ別のカッコいい生き方をしていて気持ちいい。
鑑賞日:10月21日 監督:本広克行
http://video.akahoshitakuya.com/cmt/1790852

■ツナグ
主人公の男子高校生が、依頼者の会いたい死者を呼び出す仕事である「ツナグ」の祖母の手伝いをしながら、「ツナグ」の意義に目覚めて仕事を継承するというストーリー。生きている人は皆、亡くなった人に対して後悔や疑念を抱いている。亡くなった人の本心を聞くことが出来たらという願望をテーマにした原作が素晴らしい。恋人を事故でなくした青年の話が一番泣かせた。最後の両親の死をめぐる主人公と祖母のやり取りが、前向きに生きる主人公の未来の明るさを感じさせる。松坂桃李と樹木希林のキャストと二人の演技が良かった。
鑑賞日:10月11日 監督:平川雄一朗
http://video.akahoshitakuya.com/cmt/1770121

■ロボット [DVD]
自分がつくった人工知能ロボットに感情まで与えたため裏切られ、挙句の果てに悪用されひどい目に合うというストーリー。余りの人間の自分勝手さに、感情を持ったロボットに同情したくなる面も。集団による歌と踊りが入るのが如何にもインドの映画だが、兎に角やることがすべてに徹底的で派手。何でもありで十分に楽しめるが、アクション場面はやり過ぎ・盛り込み過ぎでチョッとしらけるところも。

鑑賞日:10月07日 監督:シャンカール
http://video.akahoshitakuya.com/cmt/1758177

▼鑑賞メーター
http://video.akahoshitakuya.com/

2012年11月 1日 (木)

2012年10月の読書メーター

2012年10月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2425ページ
ナイス数:56ナイス
http://book.akahoshitakuya.com/u/195601/matome?invite_id=195601

■新しい世界観を求めて
同じ戦後先頭世代で活躍している二人の対談集である。佐高氏が困難に立ち向かう人間に応援のメッセージを放つのに対し、寺島氏は時代や世界という大きなテーマで、全体の体系化を試みるという違いはあるが、ともに魯迅や石橋湛山のリベラルな思想に共鳴している。アメリカを通じてしか世界を見なくなってしまった戦後日本人への危機感から、戦後の歴史を振り返り、リベラルな思想すなわち絶対的な価値に寄りかからず、自分の頭で何が正しいかを常に考え、孤高を恐れず発言することの重要性を論じている。戦後の歴史観は大変参考になった。
読了日:10月28日 著者:佐高 信,寺島 実郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/23285622

■不愉快な現実  中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書)
大使経験の長い著者は、今日本に求められているのは、「①中国は、経済・軍事両面で米国と肩を並べる大国になる。②米国に依存するだけで日本が繁栄する時代は終わった。」という事態を直視し、それを踏まえて新たな外交戦略を出すことだと言う。日本は東アジアとの連帯なくして経済的繁栄はないのだから、領土問題で争うより、複合的相互依存関係に持ち込むべきだ。利益のため中国重視に切り替えた米国が、日本を守るために中国と軍事的に対決することはないとの主張は説得力がある。米国の圧力に負けて隷属しているのは国益に反すると思う。
読了日:10月16日 著者:孫崎 享
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/22967608

■蒲生邸事件 (文春文庫)
予備校の試験を受けに上京した主人公は、ホテルの火災に巻き込まれるが、時間旅行者に助けられ、58年前の昭和11年、歴史的な2.26事件の当日にタイムトリップする。未来からやってきた人間は、歴史を変えることが出来るが、個々の事実を変えたところで、それは取り替え可能な部分に過ぎないから、歴史の流れを変えることが出来ない、という歴史観が面白い。時間旅行の能力を持っても、人間はどうも幸せになれそうもない。細部が丁寧に描かれており、物語が非常にリアルに感じられるので、非日常的な展開にもぐいぐい引き込まれる。
読了日:10月9日 著者:宮部 みゆき
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/22783387

■非常時のことば 震災の後で
3.11の震災後に、ことばや文章に対する感じ方・考え方がどう変化したかについて書いている。「ことば」に対する抵抗が強くなったが、それでも喋ること、書くことを大切にしたいという強い意志を感じた。普段私たちが喋っている時、実は考えて喋っているのではなく、教わったことを喋っているだけだという指摘は耳が痛い。自分の感情や社会の風潮に流されないよう、冷静に自分の奥底を覗き込んで何かを見つけるべく、兎に角書くことが大切だという主張に共感する。多くの文章が引用されているが、何をどう読み取るべきかも教えてくれる。
読了日:10月7日 著者:高橋源一郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/22726495

■大阪維新で日本は変わる! ? (ベスト新書)
国民が納める税金77兆円のうち30兆円(40%)が公務員3百万人(5%)の人件費で、給料水準は民間の1.6倍であるという。天下り先や事務費等の無駄も含めると税金の約半分を景気とは関係なく公務員が使っている。日本は「官富民貧」の国だ。民主党は公約の2割カットで7兆円を捻出するはずが、官僚に取り込まれて増税を決め自民党と同じになった。官僚と闘って「公務員改革」と「税金のムダ遣い阻止」を実現できるのは「維新の会」しかなさそうだが、彼らも万全とは言えない。余命3年の日本は、多党大連立で行くしかないと主張している。
読了日:10月2日 著者:福岡 政行
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/22614856

■楊令伝 9 遥光の章
もう少し読んでいたかった禁軍との戦いが、あっけなく終わってしまった。楊令は宋との戦いを深追いせず、拡大した梁山泊の領土内の国づくりを始めた。疲弊した民の生活を建て直し、税金の安い「いままでなかった民の国」をつくろうという楊令の志が素晴らしい。しかも一番重要な資金を、日本の砂金と西域の物資を仲介することで得るという壮大な構想を描き、その実現のために手を打ち始めた。さすが、楊令はただ者ではない。宋の開封府の陥落も近い。岳飛はどうするのだろう。青蓮寺の李富の動きが不気味だ。
読了日:10月2日 著者:北方 謙三
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/22612916

■今こそアーレントを読み直す (講談社現代新書)
libertyは抑圧的な支配からの自由=解放、freedomは共通善をともに探究する政治的共同体における政治的自覚を持った市民の自由。二つの自由は近代市民革命から生み出されたものだが、どちらを取るかが両陣営に共通の東西冷戦の前提だった。アーレントは、後者の自由を、人間性を多元的に発展させるものとして擁護する一方、右であれ左であれ、「人間性」を自然に根差すと一義的に規定し、人民を最終的な解放へと導こうとするような思潮は、敵対する者を排除して多元的な人間性を破壊し、全体主義への道を開くものだと主張する。
読了日:10月1日 著者:仲正 昌樹
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/22577557

▼読書メーター
http://book.akahoshitakuya.com/

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  • 鈴木亘: 「財政危機と社会保障」
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