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2012年12月

2012年12月24日 (月)

イチローのファン

 昨夜のテレビで、イチローの熱烈ファンの米国人女性の話が放送されていた。シアトルでゲームがある時は欠かさずライト側の最前列に陣取り、9年間、「イチ・メーター」と名付けた手作りの表示板でイチローのヒット数を表示し応援し続けたエイミーさん。

 イチローがマリナーズからヤンキースに移籍した時に悲しみにくれていたが、その移籍第1試合がシアトルで行われ、イチローはライト守備位置から、エイミーさんに感謝の言葉を伝え、ハイタッチまでしてみせた。遠慮して今までサインすらもらったことがなかった彼女の喜びように胸が熱くなった。何事にもベストを尽くすイチローを尊敬し、勝手に始めた「イチ・メーター」だった。イチローは、それにずっと勇気づけられていて感謝していたのだ。

 その後、エイミーさんのもとにイチローから手紙とプレゼントが届く。サイン入りのバットとスパイク。彼女の喜びの大きさは我々にはとても想像できない。ますますイチローが好きになったに違いない。移籍してもなお、彼女は「イチ・メーター」を続けている。

 そこまで気を配ったイチローに、彼女だけでなく見ている自分も感動させられた。孤高の天才で冷徹なイメージを持つ彼に、人間的な優しい一面を見たというよりも、心からのファンへの感謝の気持ちを見たという気がする。努力の原動力の陰に、応援してくれるファンの存在が重くあるということだろう。実際、我々凡人の仕事においても、頑張ろうと言う気持ちの背後には、必ず何らかの応援をしてくれる人たちの存在がある。そしてそういう人たちへの感謝の気持ちを忘れてはいけないということを気づかせる。

 天才的な能力も、地道な努力の積み重ねの上に花開くことを教えてくれたイチローを、別の面から改めて尊敬し直した。

2012年12月21日 (金)

日本の進むべき道

■衆院選で振り子が逆に触れ、自民党の圧勝となった。自民党の支持率が跳ね上がったわけではなく、民主党の失政や第三極の分散の結果だと言う。実際比例区の得票率で自民党は票数を若干だが減らしている。民主党が減らした票数がピッタリ第三極の3党への投票数になっている。自民党は3年3か月の下野で生まれ変わったと言うが、本当かどうかはすぐ明らかになる。

■国民の自民党への期待は、景気対策だろう。安倍総裁は、日銀にもっと積極的に金融緩和をさせればデフレが収まり、景気は回復すると考えている。また10年間で200兆円の財政出動で公共工事をする国土強靭化計画により需要不足は解消するとする。財源は建設国債という借金だから財政破綻のリスクは一層高まる。しかし、ゼロ金利政策の下での金融政策の有効性については専門家の中でも意見が分かれている。企業の投資意欲が減退してるので量的緩和をしても、銀行が国債を買うだけに終わる可能性が高い。また、成熟国家においては公共工事が経済に与える影響は小さいとも言われている。現在は海外投資家を中心にした期待感から円安・株価上昇の効果が現れているが、いずれ金融政策・財政政策の限界があきらかになるのではないか。

■榊原英資「日本をもう一度やり直しませんか」(日経プレミアシリーズ)によれば、そもそもデフレも円高も、マスコミが伝えるイメージと違う。物価が下がっていると言われているが、それは新興国の安い消費財が入ってくるからだ。デフレはグローバリゼーションに伴い先進国で必然的に発生する物価の収斂現象だという。実際に資源やエネルギーの価格は上がっているが、円高の勢いで帳消しにされているのだ。またデフレ下でも経済成長はしているという。円高についても、それは円が強いと言うことであって、アメリカがドル高で豊かになったように、日本も円高を活用すべきだという。基本的には苫米地氏の見解と同じだ。いずれにしても、一国の政策で何とかなるようなものではないと言う。

■しかし景気が悪いのは事実。それは成熟国になって市場が飽和しているからだ。生産人口の減少や生産性の低下など潜在成長率が落ちているからだ。企業が元気になって賃金が上がらなければ、消費者の購買力も上がらず、物が売れなければ企業は投資しない。まずはフランスを見習って、子育て支援から初めて、人口を増やさなければいけない。女性労働力の活用や移民の受け入れも必要だ。

■さらに成長戦略が欠かせない。日本は既得権者の力が強く、政治家の力が弱いから規制緩和ができない。官僚は基本的に現状維持派だ。行政改革から始めないと日本は何も変わらない。元大蔵官僚の榊原氏は官僚を擁護しているので、そこが物足りない。

■以下、榊原英資「日本をもう一度やり直しませんか」(日経プレミアシリーズ)の要約
●日本の進むべき道
・グローバリゼーションに乗り遅れたから、日本は失速した。帝国化・金融化が遅れ二極化(格差拡大)
・21世紀はリオリエント現象。欧米を見ながら国を作り変えてきた日本は方向感覚を失っている。良好な日米関係を崩すことなく、東アジアの経済統合を目指すべき。そのためには1951年の日米安保条約を見直すべき。
・地方分権化と中央省庁の縮小。都道府県を廃止して、国と基礎的自治体の二層にすべき。
・成長を争うのではなく、成熟国家として存在感を高めるべき。

●1章 内向き日本の衰亡
・1820年には、GDP1・2位は中国とインドだった。2050年にもそうなる。2国の人口が世界の4割を占める。人口13億と11億で世界の4割弱を占めるのだから当然。
・政府・企業・メディアが内向き。選挙=国内問題重視、コンプライアンス重視、そこそこに大きい国内市場に拘泥=ガラパゴス化、英語力の貧困、
・翻訳文化が外国語習得能力を下げた。

●2章 大きな政府で世界を目指す
・豊かさで欧米に追いついて、目標を失った。
・アメリカ化を目指した小泉改革。相対的貧困率と年齢別賃金格差が拡大。
・歳出予算の国民負担率が30%代で低い米・韓・日・墨、60%前後の独・仏・伊。
・成熟段階に入った日本は、ヨーロッパ型福祉社会を目指すべき。大きな政府にならざるを得ない。
・所得再分配により、高齢者ではなく育児や雇用を中心の社会福祉を拡大すべき。フランスの出生率2を越えた。
・ガラパゴス化=オーバークオリティ。国内市場の飽和。
・アメリカはドル高で活況。海外M&Aや国際金融で有利。円高を活用し、海外への生産拠点の移動、販売網の拡大にプラス。

●3章 脱欧入亜のススメ
・東アジアの経済統合は進んでいる。日本の素材、アジアの部品、中国で組立の生産ネットワーク。
・市場としての中国、次はインドだが、過剰な民主主義が問題。独立を助けたと対日感情良好。
・18世紀インドの経済力が英国に衝撃を与え、産業革命の契機になった。インド木綿の輸入禁止と模倣。
・中国も日本も官僚制度は似ている。
・日本は成熟国として成長ではなく、アジアの成長を助けることで、成熟を維持する政策が必要。

●4章 選ばれた「素人」としての政治家
・日本の公務員の数は多くないが、地方自治体の議員がフルタイムなので歳費が高くなる。欧米のように兼業でいい。
・官僚主導は問題だが、政治主導による素人行政はさらに問題。官僚の専門性と中立性をうまく活用すべき。
・ヨーロッパのように政治と行政が人事面も含めてより深く交流する方が、政治がうまく官僚をリードできる。

●5章 官の能力をどう使うのか
・日本は明治維新でも戦後でも税や教育は中央集権的だったが歳出は分権的だった。地方分権は江戸時代からの伝統。主権国家の形を残して可能な限り分権化を進めるべき。
・しかし同質性の高い狭い日本で道州制は要らない。廃県置藩で国と基礎的自治体の2層構造でいい。
・「上からの改革」が日本の近代化に寄与したが、グローバルな時代には1940年体制を廃して、教育も産業も個性豊かな国にする必要がある。
・公務員の「再就職」はケースバイケースで判断すべき。「天下り」原則禁止は弊害が多い。
・官と民が一体となって海外に進出するかつての「日本株式会社」を再考すべき時代。

●6章 教育こそ市場化する
・明治時代の教育改革=機会平等・能力主義の体現。身分制度を一掃した非階層社会が日本に確立。客観的な学力が社会的地位を決めることの革命性があった。
・急速な近代化、産業化のために広く人材を求めるのに極めて優れていた。
・戦後の学歴主義批判とタテマエの社会主義的平等論が、ネポティズムを生み、総仕上げの「ゆとり教育」が学力を崩壊させた。文科省と日教組の罪。
・教師を免許制で囲い込んでいるため、教師という職業のモビリティが極めて低い。
・規制を緩和し市場原理を活用して教育の分権と多様化を図ることにより生徒に「勉強させる」ことが必要。
・社会が成熟段階に入った今、より多様性にとんだ教育が求められている。官僚やサラリーマンを育成するより、様々な分野のプロフェッショナルを要請することが大切。
・グローバリゼーションの時代、発信力は受信力と同様、きわめて重要になってきた。

●7章 失われる国際競争力
・「日本型」経営の成功。終身雇用・年功序列・企業内組合、日本人の教育レベルの高さや勤勉さ、政府の産業政策・銀行政策の奏功。
・金融機関を中心とした企業グループという特殊な企業所有形態と持ち合い株というインサイダー的経営で成功。日本経済は世界経済の外側で運営されてきたため国際化に遅れ。・90年前後の円の急激な切り上げで、国際化せざるを得なくなる。
・高度成長期に、外国から隔離された状況で成功した日本企業は、経済の成熟化やグローバリゼーションの環境にうまく適応できず、次第に競争力を失った。
・一方で、株主代表訴訟制度や時価会計制度、内部統制制度、コンプライアンスなど、日米構造協議におけるアメリカの要求に従った制度改革で、アメリカの狙い通りに企業活力を失った。
・欧米への進出は「日本流」が通用したが、新興国では低価格でそこそこの品質でないと大量販売ができない。日本企業はその転換が出来なかった。
・ソニーはカンパニー制などアメリカ型の組織改革で失敗した。短期の業績を求めすぎたため、組織が官僚化し自由闊達な企業文化が崩壊した。
・サムスンの成功は、李会長の絶対的権力を代行してグループ全体の方向・戦略を定める秘書室=100人規模の強力なスタッフ組織の存在。グローバル化やデジタル化の潮流に対応。
・日本型のボトムアップのいいところを保持したうえで、トップのリーダーシップの確立が出来ればベスト。いずれにしてもはっきりした戦略を確立することが先決。

●8章 成熟国家の新しい開国
・21世紀のキーコンセプトである環境・安全・健康のいずれをとっても、日本は世界の最先端を走っている。四季と自然(海・森・水)、安全と平和、日本食と長寿。
・21世紀は、経済のダイナミズムという点では中国やインドを中心とするアジアの時代だが、豊かな成熟社会という観点からは、日本の時代でもある。
・デフレは、景気後退や貨幣的現象ではなく、グローバリゼーションにより世界各国の物価のレベルが収斂することによって起こる構造的な現象。先進国はデフレで悩み、新興国はインフレに悩む。これを一国の政策で変えることは困難。(水野和夫「100年デフレ」2003)日本のデフレが激しいように見えるのは、アジアとの経済統合が進んでいるから。
・金融政策にデフレの原因を求めるのは過ち。むしろ、持続可能な成長、あるいは、成熟経済のもとでの生活の質の向上などが政策目標として掲げられるべき。
・日本の緩やかなデフレは物価安定というべき。2000年代に入ってデフレ下でも成長はしている。
・成長の時代が終わった成熟国家としての日本は、TPPにおいても何でも自由化するべきではなく、環境や自然、生活環境の保持や安全、健康や食品等守るべきものは守らなくてはならない。
・欧米中心の近代文明が行き詰まりを見せ、世界が数百年に一度の大きな転換期にある今、日本はそろそろ世界に向けて、「日本的」なものを発信する時期なのではないか。
・パックス・ヤポニカのエッセンスは、日本の安全・平和。その背景に神仏習合と象徴天皇制があった。宗教的対立がなく、権威が権力と分離し万世一系という形で続き、平和の支えとなった。空海が日本に仏教を入れたときこのシステムを作り上げた。(山折哲雄)・翻訳文化から脱皮して、日本を日本として認識し、外国の言語を日本と異なった外国語として認識しなくてはならない。そのためには、外国語、あるいは英語をしっかりマスターし、日本語と英語を折衷することなく両立させなくてはならない。受信から発信へ、そしてそのために英語の第二の公用語化をすすめるべきである。

2012年12月 4日 (火)

2012年11月の鑑賞メーター

2012年11月の鑑賞メーター
観たビデオの数:3本
観た鑑賞時間:377分

■最強のふたり
奥さんを亡くした大金持ちの身障者フィリップの介護をすることになった失業中の黒人ドリスは、フィリップに同情も遠慮もせずに言いたいことを言い、重苦しい家の中を持ち前の明るさと強引さでどんどん変えて行く。いつも機嫌の悪いフィリップがドリスの言動に驚き喜んで見せる笑顔がとてもいい。フィリップが積極的になって行くと、見ているこちらも嬉しくなる。ドリスの采配で再婚もできハッピーエンド。元気をもらえる映画だ。

鑑賞日:11月25日 監督:エリックトレダノ
http://video.akahoshitakuya.com/cmt/1876821

■北のカナリアたち(吉永小百合主演) [DVD]
映画は原作とかなり違っており、先生と生徒の心の絆をテーマにした別の作品だ。昔の生徒一人一人が、事件をそれぞれ自分の責任と感じ罪悪感を持っていた所は同じだが、先生と過ごした歌のある楽しかった学校での生活と、事件後の生徒たちの上手く行かない人生が対比的に描かれていた。吹雪に荒れ狂う北の海と青空に緑広がる北の大地の対比が印象的に使われていた。先生自身に大きな秘密があったことで、ストーリーに深みが増した。最後は、全てのわだかまりが溶けて心が繋がり、感動させてくれる。吉永小百合のためのような作品。
鑑賞日:11月06日 監督:阪本順治
http://video.akahoshitakuya.com/cmt/1832326

■交渉人 真下正義 スタンダード・エディション [DVD]
地下鉄おたくの爆破犯と警察・地下鉄会社との闘いの話。警察の中に交渉人がいるとは知らなかったが、確かに必要だと思った。自己顕示欲の強い犯人とのやり取りでは力づくでは解決できず、心理的な駆け引きが必要だからだ。IT社会ではこうした犯罪は容易に起こり得るし、身近な地下鉄が舞台だけに非常に現実感があった。映画内のコンサートで次第に盛り上がって行くボレロの曲が、エンディングに向けての臨場感の演出に効果的だった。最初は頼りない感じだったユースケの顔が、最後は引き締まって見えた。予想より良かった。
鑑賞日:11月04日 監督:本広克行
http://video.akahoshitakuya.com/cmt/1826803

▼鑑賞メーター
http://video.akahoshitakuya.com/

2012年12月 2日 (日)

「現実を視よ」を読む

柳井正「現実を視よ」PHP研究所2012を読んだ。

■我々は、日本が世界でも有数の豊かな国に属し、皆幸せだと思っているのではないか。しかし、著者はそれは日本人が現実を視ていないからだと指摘する。世界の中で見たら決して豊かとは言えないというのだが、統計や事例を引いて説明しているので、説得力がある。

■日本の財政危機と政治家・官僚の責任については、問題の指摘や対策に目新しい主張はない。ただ、日本の一定の豊かさを持った現在の生活(実際は欧米ほど個人は豊かではない)が、20年前の繁栄による蓄財と次世代からの借金と円高に支えられた虚構という指摘は、改めて納得させられる。

■私たちが反省しなければならないのは、バラマキによって金をくれる政治家を選んでいてはだめだと言うこと。「働かざる者、食うべからず」の意識をもう一度取り戻すべきだ。勿論、資本主義の弱点である格差の極端な拡大は、セーフティネットとしての社会保障を充実すべきだ。しかし、足りない金は金持ちから取ればいいと言う発想では、日本から金を稼ぐ企業家がいなくなる。弱者支援と企業家支援は両立させなければ、資本主義は成り立たない。こうしたビジョンを示しその方向に向けて、現実の問題解決方法を具体的に示すことのできる政治家はどこかにいるはずだ。

■柳井氏の意見は事業家らしく企業の経営者や一般社員についても及ぶところが新しい。日本の現状を政治家や官僚のせいにしているだけで、皆が当事者意識を持たなければ、状況は何も変わらないという指摘は、全くその通りだと思う。最終的には企業や個人が頑張って金を稼がない限り、日本は豊かさを維持することは出来ない。政治家や官僚が何を言おうが騙されてはいけない。彼らは金を稼ぐのではなく、国民から集めた税金を使うだけの存在だから。

■元気のない日本の企業が、事業を成功させ継続するためには、需要に応えるだけではだめであるし、高品質化や改善のイノベーションだけでもだめなのだ。世界をリードするような破壊型のイノベーションにより顧客のニーズを掘り起こし、顧客を創造するしかない。行き過ぎた金儲け主義ではなく、より良い社会にするために価値を提供する健全な競争の精神を取り戻すべきである。

■日本の市場が縮小している以上、日本企業は市場が拡大しているアジア、中国に進出せざるを得ない。海外への進出は、コスト競争から日本人の給料を下げる影響があるから、出なくて済むならそれに越したことはない。海外で生産して、海外で販売して儲けても、日本の雇用は増えず、日本人は豊かになれない。しかし日本は人口が増えず、需要は伸びない。また社会保障が十分でなく将来の生活不安を抱えるために消費が活発でなく、需要が増えないから企業の投資意欲も低いという悪循環にあるから、企業が需要を外に求めるのは仕方がないし、そうしなければ生き残れない。

■ただそこでも、すでに海外で顕在化しているニーズに応えるだけの海外進出では、ローカル企業との差別化が難しいので上手く行かないだろう。日本で需要を開拓して評価されたものを、海外に需要と一体で輸出する形が必要だ。国内である程度成功していないと、海外での成功も難しいと言うことだろう。やはり国内でも市場を開拓できる力、需要をつくる力、魅力ある商品やサービスを創造する力が必要ということだ。

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■以下、主な主張を引用する。

●日本の相対的貧困率は毎年じわじわと悪化を続けている。平均年収の減少や非正規雇用・一人親世帯の増加が貧困率を高めている。日本人が貧しさを感じずに済んでいるのは、バブルの頃の蓄えと借金によるばら撒きに加えて、円高に助けられている部分が大きい。1ドル80円が160円になれば、グローバルレベルでは日本人の平均年収400万円が200万円になり、日本は一気に世界の中で「貧しい国」へ転落する。・・・いまの日本人は「身の丈の倍の生活」をしているという事実をまったくわかっていない。

●日本のバブルがはじけて以降の20年間、米国もEUもアジアも経済成長しているのに対し、日本だけが横ばいを続けており、取り残されている。・・・20年前に金持ちだった日本は、いまではせいぜい「中の下」にすぎない。しかしそこで暮らしている日本人は、相変わらず、自分たちは「上の上」だと勘違いしたままである。・・・このままいけば日本は、三等国になり下がり、国民は貧乏に喘ぐことになる。

●当たり前のことだが、経済が成長しなければ、税収などの歳入も減少する。そうなれば、国は歳出を絞らざるを得ない。福祉予算は削られ、公共サービスの質も落ちるかもしれないが、成長していないのだから仕方がない。・・・ところがこの国は、・・国債を発行し、予算規模を拡大していった。国民が経済成長をめざしてあくせく働く代わりに、国家が目下の状況をなるべき維持する、痛みを伴わないやり方をした。

●政治家も官僚も三流どころか四流。1千兆円を超える累積債務がありながら、なお税収の二倍の歳出予算を組んでいる。財政破綻の被害者は国民。入量出制の基本を忘れ、未来の国民が声を持たないのをいいことに、莫大な借金を直接給付という名のもと、国民にばらまいた。無駄の削減をせずに、消費増税するのは延命策にすぎない。自民党の国土強靱化基本法案は常軌を逸している。この国の政治家は言いたいことだけ言って、それが実現できなくても、全く責任をとらない。「消えた年金問題」しかり、「福島第一原発事故」しかり。・・・橋下徹氏の類希なる実行力に期待したい。

●米ハーバード大学のアルベルト・アレシナ教授によれば、財政再建には財政支出を拡大して景気を拡大させるケインズ的な政策より、歳出を削減するいわゆる緊縮財政の方が、効果が高いという。・・・政府が財政を引き締めると、これで将来、より大きな痛みを伴う財政再建を行わなくて済むと国民が安心し、消費が拡大することを、理由の一つに挙げている。・・・キャメロン首相は命を賭して緊縮による財政再建に取り組んだ。・・・国民に甘い顔をしているうちに国がつぶれてしまったら、その後には緊縮財政どころではない痛みが待っている。

●不況であろうとなかろうと、借りた金は返すのが商売の鉄則。本来、市場から退場を促されている企業に対して、借金は返さなくても良い、国が最後まで面倒を見る、というのは社会主義国そのものである。・・・「資本主義の精神」を忘れていく中でこの国にはいつの間にか、お金は稼ぐものではなく、貰うもの、という意識が蔓延してしまった。・・・あそこにお金があるからこちらにもってきて、不足分を穴埋めしよう、足りない人に分けて凸凹を均そうとの発想は、稼ぐ力のある企業や個人を日本から追い出してしまう。

●日本から「資本主義の精神」が無くなった象徴が「人材がサラリーマン化してしまった」ということだ。・・・エネルギーのベクトルは社会を変えるのではなく、居心地のいい現在の状態を出来るだけ温存する方向に傾いていく。…サラリーマンも官僚も「身分」を手にしたと思っている。・・・海外の管理者階級、いわゆるホワイトカラーたちは、自分たちが会社の一部とは、絶対に考えていない。自らは独立した事業者で、会社と対等の契約を結んでいるという認識である

●「日本人は頭がいい」は過去の話で、「情報格差」が解消されていくとともに、日本とアジア諸国を隔てていた「教育格差」も、ほとんどなくなっている。日本の大学の世界ランキングも、アメリカへの留学生の数も落ちている。収益性の高い企業ランキングでも、日本は中国・韓国・インドに負けている。

●日本には世界が垂涎する「技術」があるというのも過去の話。技術自体がどんどんコモディティ化する中で、各国のメーカーはそれぞれの商品に最適な技術を世界中から集積する「水平分業型」の事業モデルをとっている。今の日本で誇れるのは「町工場」の職人技だけだ。

●しかし重要なのは「職人気質」ではなく「商人気質」とでも言うべきもの。技術志向ではなく、どういう技術をどのような形で製品に組み込めば、顧客の生活の質を高められるかという発想が必要である。・・・成長を否定するような国家からは世界を驚かせ、新しい価値を生み出すイノベーションは絶対に生まれてこない。

●今日本に必要なことは、日本人だけの箱庭をやめてオープンソサエティーに移行すること。純粋培養では、世界で戦える人材は絶対に育たない。アメリカやヨーロッパはもとより、中国やASEANにしても、成長している国は国外からどんどん優秀な人材を受け入れている。

●日本人の強みは、勤勉で努力を惜しまない、仕事に対する責任感、高いサービス精神、謙虚に学ぶ姿勢などである。・・・・全体のために個を調和させる東洋的価値観が、世界的に注目されている。西洋的価値観では、個々人の関係はあくまでも契約に基づくもので、感情よりも理性が優先される。あまりにそれが行き過ぎると、とかく利益を最優先する考えに陥りがち。

●不朽の名著『失敗の本質』をものした野中郁次郎氏にお目にかかったとき、太平洋戦争の敗戦も、バブル期以降の日本の衰退も、その本質は似ている、という話をされた。目の前にある現実を視ないで、過去の成功体験にとらわれて変化を嫌う。論理よりも情緒を優先し、観念論に走るといった特性は、時に取り返しのつかない結果を招く。

●失われた20年の教訓。それはみんなが評論家になってしまったこと。傍観者ばかりで当事者がいなければ、状況は何も変わらない。・・・何をどうすればいいかは、教えてもらうのではなく、自分に問いかけ、自分で答えを出す。それが自立した人間。そうした人間たちが集まって、強い国ができる。

2012年12月 1日 (土)

2012年11月の読書メーター

2012年11月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1566ページ
ナイス数:66ナイス
http://book.akahoshitakuya.com/u/195601/matome

■現実を視よ
著者は世界に飛躍するユニクロの会長兼社長。日本を愛するが故に、この国の現状に対して何か言わずには終われないという思いで書いたと言う。日本人は、日本は豊かだと思っているがそれは20年前の話。日本だけが全く成長しておらず、世界の流れから取り残されている。愚政官僚社会主義により日本では金は稼ぐものでなく貰うものになってしまった。経営者も資本主義の精神を忘れ、皆がサラリーマン化したと指摘する。事業のグローバル化で成功した著者だけに、具体的で説得力がある。日本を再生できる元気な若い人たちが増えることを祈るばかり。
読了日:11月28日 著者:柳井 正
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/24039930

■蛍川・泥の河 (新潮文庫)
「泥の河」は戦後10年経った大阪の場末の風景。橋の袂に住む小学2年の信雄。小舟に住む訳ありの少年喜一との出会いと突然の別れの物語。少年時代に様々な新しい体験をした時の不安と心のときめきを思い出す。お化け鯉が暗示するのは、未知の大人の世界だろうか。「蛍川」の舞台は昭和37年の北陸。主人公は中学3年の竜夫。事業に失敗した父親の死、子供が出来ない父の前妻、父と駆落ちした母、親友の死、同級生への恋心など、思春期の心の揺れ動きが描かれ懐かしい。北陸の雪、桜、蛍の美しい描写に圧倒される。蛍火が希望に繋がっている。
読了日:11月27日 著者:宮本 輝
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/24021910

■楊令伝 11 傾暉の章
西域への交易路の開拓は韓成や秦容らの活躍で見事成功し、梁山泊を楊令の夢見る国に一歩近づけた。それは、民を税と見る国ではなく、帝を推戴せず全ての人を財産とみる国だ。一方の岳飛は、税の支払いを拒む荘の皆殺しを実行した。さらに金軍の簫珪材に挑んで敗れ、梁山泊から馬を強奪した。岳飛はどんどん変化して行く。梁山泊は岳飛に報復戦を仕掛けたが、そこで恐るべき力を発揮した秦容の今後の活躍が楽しみだ。蘇端に代わり拷問を引き受けた杜興だが、戦いで人を殺すことは平気でも拷問は苛酷なようだ。
読了日:11月20日 著者:北方 謙三
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/23856853

■世界を知る力 日本創生編 (PHP新書)
3.11震災後の日本の状況は、政党政治が機能不全に陥った関東大震災直後に似ている。ファシズムに走った轍を踏まないよう、世界の中の日本という視界における新しい日本のビジョンが必要だ。戦後65年経つのに、米国に隷属したままで近隣諸国との信頼関係も築けていない日本は、親鸞が説いた自立自尊の魂を失っている。アジアのダイナミズムに向き合った東北の産業再生、エネルギー、環境等の具体的な政策提案をしている。国際社会での存在感を維持するために、原子力の平和利用の技術的基盤を維持すべきだという主張は独特だ。
読了日:11月18日 著者:寺島実郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/23813997

■成熟ニッポン、もう経済成長はいらない それでも豊かになれる新しい生き方
日本は労働力が不足するので高度成長は望めない。グローバル化の中で無理に新成長産業をつくって投資すれば新たな格差と貧困を生む。これまであくせく働き繁栄し成熟したのだから、今後は衰退を賢く楽しみ心の豊かさを求めた方が良い。そこそこの生活を維持するにはマイナス成長でなければいい。海外で蓄積された富から上がる投資利益や利子の分配を受けたり、仕事のシェアで雇用を確保すればいい。というのだが、ここ4年の平均成長率はマイナス0.5%の現実もある。「年寄りの冷や水」と言われない程度の「元気な年寄り」でいたいものだ。
読了日:11月10日 著者:橘木俊詔,浜 矩子
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/23596968

■楊令伝 10 坡陀の章
宋が遂に崩壊したが、領土全体を統治する力は、金国にも梁山泊にもない。岳飛や張俊たちは南の拠点に逃れ、周辺の民から徴税し兵糧を確保して軍を維持している。賊徒から民を守る代わりに税を取る。国とは何かが問われている。岳飛は崔女と出会い、税の安い梁山泊が民の憧れの国であると知る。交易による収入が梁山泊にはあるからだ。民への責任感を果たすには、軍事だけでなく経済が必要なのだ。楊令が他の将軍と違うのはそこだ。葉敬が史進の厳しい稽古を受け死域を経験しながら成長して行く姿に、現代に足りないものを感じ打たれた。
読了日:11月6日 著者:北方 謙三
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/23501419


▼読書メーター
http://book.akahoshitakuya.com/

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お薦め本

  • 鈴木亘: 「財政危機と社会保障」
  • 波頭亮: 「成熟日本への進路」
  • 中野剛志: TPP亡国論
  • 増田悦佐: 日本と世界を揺り動かす物凄いこと
  • 古賀茂明: 日本中枢の崩壊

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