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2013年7月

2013年7月20日 (土)

講演「米・中・ロシアの狭間―日本の立ち位置」を聞いて

■河東哲夫氏の標題の講演を聞く機会を得た。氏は外務省出身で大使経験もあり現在、4か国語で世界に主張を発信しておられる方である。(www.japan-world-trends.com)
「米・中・ロシア―虚像に怯えるな」(草思社)の著者でもある。非常に勉強になった。以下に要約をまとめる。

■要約
 中国がGDPで世界一になると言われているが、グローバル・スタンダードにはなれない。中国は、近代産業社会に生きる人間が使える価値観の体系を持っておらず、利己的な行動が多い。GDPの7割は巨大な国内インフラ建設であり、輸出の半分は外資系企業によるもの。賃金上昇により外資企業の生産基地としての価値が低下している。国営企業や共産党主導の経済は非効率で上手く行かない。一党独裁では、暴動しか権力交代の手段がない。そんな国が国家としてもつのか?

 米国は、日本が憧れたかつてのアメリカではない。白人、中南米、黒人、アジア系の多民族国家で2050年には白人は50%を切る。職や地位の競争により、人種が相対化された。黒人の中産階級、白人の下層階級が生まれ、中国系・韓国系の勢力が反日ロビー活動を行っている。他人には公正を要求するが、自分を護るためには汚いことを平気で行う。ただ、中国よりはアカウンタビリティが社会常識となっている。米経済には回復する基礎がある。人口は50年までに1億人増え、中国の賃金上昇・組合の弱体化で住宅・自動車等の製造業が復活した。シェールガス・シュールオイルで世界一の資源を手に入れたからである。

 ロシアは中進の石油大国で輸出で稼いだお金で消費財を買っている。外見だけは米国・中国並みになったが、外資への依存度が高く、人口1%が国富の50%を差配する格差社会である。労働者の売り手市場・資源依存・国営企業が大多数で分配を優先などが、発展の可能性を妨げている。政治トップはKGB出身者が多く、社会を知らない。中産階級に不満のマグマが溜まっている。中産階級の多くは公務員。日本企業・日本文化の人気は高い。ソ連崩壊時の苦労から改革に後ろ向きの国民。中国より民主的だが、アジアでのプレゼンスは弱い。

 日本は、国民国家ではなく多民族・多言語国家の3つのメガ国家に囲まれている。逆に言えば、経済的には大市場に隣接した有利な地理的位置にある。安全保障さえ確保すれば理想的な位置といえる。日本が生産財(資本・技術・機械・部品)を東アジアに輸出し、東アジアが製品を米国に輸出し、米国が市場を提供という分業が進んでいる。このような中で日本の安全保障を確保するには、いくつかのオプションがある。

 ①非武装中立=ポーランドのような日本分割を招く。②武装中立=核がないので米中に対抗できない。③核武装=狭い国土では核抑止が効かない。④米中の間で立ち回り=民主主義なので機敏に立ち回れず、①になる危険。結論として、⑤米国との同盟=自由・民主主義を守るにはこれしかない。但し、一緒に軍事行動して従属ではなくもう少し肩を並べる。

 中国とは敵対不要。備え、抑止するだけ。ロシアとは、日本の利益・日ロ関係の利益になる範囲で関係促進。極東、シベリアを少しは支える。領土返還要求は続ける。但し、焦らず、感情的にもならないこと。

 日本人が、日本語と日本の習慣で生活でき、日本語でいい仕事と収入を確保できる空間を守るもの、安全保障・治安と社会保障そして経済活動のルールと環境作りをするもの、が国家であるべきだ。

 今、国民の声をまとめるシステムが壊れている。国民自身がマスコミに振り回され「一人の有能な政治家がすべて解決してくれること」に過剰期待している。ファシズムの危険がある。国民が、政治・政府に対して理性的で能動的な関わり方をすべき。もっと政治リテラシー、外交リテラシーを磨くことが今の日本に必要なことだ。

2013年7月17日 (水)

初めての中欧の旅 

 8日から15日まで中欧諸国を初めて旅行した。チェコのプラハとクルムロフ、オーストリアのウイーン、スロバキアのブラチスラヴァ、ハンガリーのブタペストの4か国5都市である。各都市は若干の違いはあるものの、ヨーロッパの古い都という意味では全く同じような印象を受けた。

 実際、全てキリスト教圏であり、オーストリア、ハンガリーのドナウ川南部はローマ帝国の範囲にあったし、5世紀西ローマ帝国滅亡後の中世では各王国が出来たものの、16世紀以降はドイツ・オーストリアを支配していたウイーンのハプスブルグ家が神聖ローマ帝国(ドイツ帝国)時代も含め、チェコ・スロバキア・ハンガリーを支配したから、宗教的・文化的にかなりの共通性がある。特にウィーンは18世紀にモーツアルト、ハイドンを輩出しヨーロッパの文化の中心だった。

 19世紀にはこの地域はすべてドイツ・ナチスの侵略を受けた。第二次大戦後はオーストリア以外はソ連の支配を受けたが、1989年の東欧革命ですべて民主化している。現在は、オーストリアのユーロ以外は個別通貨であるが、4か国とも欧州連合に加盟しており、一体化が進んでいる。それを強く感じるのは、車での国境通過の時だ。日本の高速道路の料金所のようなゲートを通過するが、検査や手続きは全くなかった。

 中世では輸送手段は船であり、川のネットワークが文明の発達条件だったから、各都市はもともとドナウ川およびその支流で繋がってもいたのだ。ドナウ川は当然ながら上流のウイーンで狭く、ブラチスラヴァからブタペストに下るほど広くなって、それぞれの都市の風景を作っているのが興味深かった。都市は川を挟んで両側に広がっている。

 各都市共に、中世の歴史的な建造物で出来ている街がそのまま保存されている感じで、現代的な建物は、上手く溶け込んで建てられているか郊外に建てられていた。社会主義化しなかったオーストリアは一番近代化されており、現代建築が街の中にかなり入り込んでいた。ちなみにオーストリアの一人当たり名目GDPは、日本より高い。プラハにはもはや東欧の重苦しい雰囲気はまったくなかった。ブダペストには一部社会主義的な質素な近代建築が歴史的建築と同居しており不協和音を奏でていた。

 各都市では教会・市庁舎を中心とした広場や公園、オペラ座や博物館、市場などを見て回ったが、中世の町は、どこをとっても絵になるような街だった。どの街も観光客で溢れていた。古い街並みと対照的に建物の中は現代的なお洒落なインテリアデザインが施されており魅力的だった。但し、狭い道路による交通渋滞や駐車場など車への対応には苦慮している感じだった。そのためか小都市のクルムロフ以外は各都市共に、路面電車が活躍していた。

 「国と国をつなぐ道が異文化の交流を生み文明を発達させた」という添乗員の方の話も興味深かった。技術が発展した産業革命以降には、モノや情報の交通手段は船から鉄道や自動車に代わり、現代では飛行機や高速のリニアモーターカーで繋がる時代となり国内も世界もどんどん狭くなっている。インターネットで情報の伝達も瞬時だ。最先端の技術を駆使して、もっともっと世界の人々が緊密に交流すれば戦争のない世界が生まれるのではないかというのだ。しかし繋がることで経済的な支配関係も生まれるので、そう簡単でもないとは思うが、基本的にはそのように技術が使われて欲しいと思った。

 短期間で5都市の旅行だったため盛りだくさんでやや消化不良気味だが、島国の日本と違って、国名でさえ目まぐるしく変わる複雑な中欧都市の歴史に触れることで、欧州連合の基礎となったヨーロッパ諸国の一体感・共通性を感じるとともに、一般市民が国家というものをどう捉えているのかに興味を抱かせてくれた。

2013年7月 4日 (木)

2013年6月の読書メーター

2013年6月の読書メーター
読んだ本の数:3冊
読んだページ数:928ページ
ナイス数:94ナイス
http://book.akahoshitakuya.com/u/195601/matome?invite_id=195601

■アフターダーク (講談社文庫)
姉エリとの関係に悩む主人公マリが、真夜中に出会った高橋、カオル、コオロギの温かい言葉に救われて、朝、家に帰り眠りにつくまでの出来事。その描き方が新鮮。著者が直接対象を描くのではなく、映画のカメラのような「私たちの視点」を介在させ、それが対象をどう見るかを描く。文中にも出て来る「私たちっていったい誰」は読者の疑問を先取り。意図的な仕掛け。エリの周りで起こるテレビ画面や鏡の中の奇妙な世界は夜明けとともに消える夢の世界か。爽やかな朝の目覚めの予兆。マリの安らかな眠りに安心して本を読み終える。好著。
読了日:6月29日 著者:村上 春樹
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/29969487

■経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)
若手新進経済学者・藤田泰之氏のシノドス主催連続対談集。内閣府の岡田靖氏、「希望は戦争」の赤木氏、「年越し派遣村」の湯浅氏を相手に、若年雇用や貧困の問題をどう解決するかを議論。生産性は自然に2~3%向上するので、その分経済成長しないと失業が発生。従ってこの問題のみならず福祉も含めたシステム改革には、経済成長が必要と主張。「個人に最低生活保障をした上で創意工夫が生かせる自由競争を」という藤田氏の意見に賛成。日本の再分配政策が票のため年寄り・田舎優先となり困窮者に金が届かず不平等社会となっているとの指摘は鋭い。
読了日:6月17日 著者:芹沢 一也,荻上 チキ,飯田 泰之,岡田 靖,赤木 智弘,湯浅 誠
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/29666735

■日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で
明治維新の頃には、今のような日本語はなかったと言う驚き。明治の中頃まであった英語を国語にとか、漢字を止めローマ字にという意見を排除し、文部省の決断で日本語が国語になった。しかし世界で日本語ほど複雑で奥の深い国語はなく、それに基づく日本近代文学は、人類の遺産。国語教育はそれを読み継がせるのに主眼を置くべき。日本語は護らねば日本文化とともに亡びる。英語は益々重要になったが、現在のバイリンガル政策は中途半端。英語で意味のある発言ができる<選ばれた人材>を育てる方が重要と説く。日本人必読の書と言いたくなる本。
読了日:6月7日 著者:水村 美苗
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/29381423

▼読書メーター
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