« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »

2013年11月

2013年11月29日 (金)

「ユニクロ型デフレと国家破産」を読む

浜矩子「ユニクロ型デフレと国家破産」文春文庫2010を読んだ。20世紀後半から現在にいたる世界経済の大きく目まぐるしい動きが分かりやすく説明されており、大変勉強になった。なぜ日本だけがかくも深いデフレの痛みを負ったのか、現政府の脱デフレ政策がいかに見当はずれなものかが、よく理解できた。
以下、要約。
▼著者は09年以降の日本のデフレは従来型とは違い、供給は拡大しているのにモノの値段だけが縮み続けている新型デフレだという。企業が生産を維持するために労働者の賃金を犠牲にして安売り競争に走ったからだが、その背景には東西冷戦後のグローバル化がある。世界の安い労働力を調達して生産しなければ競争に勝てなくなったからだ。これを象徴的にユニクロ型デフレと呼んだ。
▼90年代、世界ではグローバル化が進行していた。日本はバブルの清算に追われ、21世紀に入ってからグローバル化に対応したため、遅れへの焦りからか過剰に適応した。小泉政権の新自由主義政策と相まって弱者切捨てで、激烈なグローバルの安売り競争に突入したため、日本社会は大きく変化し、労働者の痛みが酷くデフレからの脱却が遅れた。大陸欧州は弱者救済の論理でバランスをとったが、米英日は格差社会化が進んだ。
▼一次大戦で欧州が疲弊した後に勃興し、二次大戦後、金を大量に保有していた米国は基軸通貨国となったが、各国が成長した60年頃から輸出力が落ちた。71年金本位制を終焉させドルにおける金の裏付けがなくなったが、米国は消費水準を維持するため、信用力がまだあったドルを無制限に発行し経済成長を煽ったため、輸入超過の借金大国になった。同時に通貨インフレとなった米国は80年代、レーガノミクスの高金利・ドル高でインフレを収め無痛の繁栄をした。86年、金融自由化で金利上限規制が外され、米国金融業界は新金融商品の開発競争を始めたが、90年代、世界中から流れ込むドルの膨張とFRBの放任により、一段と投機化し歯止めなく暴走して行った。
▼グローバル化でカネも国境を越えて動くようになったが、IT技術がこれを加速した。慢性欠病の米国に向かって、カネ余りの日本、中国、ドイツから大量の資金が流れ米国の成長を助けた。しかし01年ITバブル崩壊、06年住宅バブル崩壊、08年リーマン・ショックと、米国金融の破綻がグローバル化ゆえに世界金融危機となり世界同時不況をもたらした。各国政府が銀行や大企業に公的資金を注ぎ込んだ結果、国家の債務が膨らみ、企業が生き残った代わりに国家が破たんの危機に見舞われた。日本はギリシャより破産に近い国だ。身内からの借金なので安全と言われているが、身内といっても企業の論理で動く機関投資家だから警戒は必要だ。
▼デフレは「自分さえ良ければ」病を発病させる。むき出しの自己利益追求は、共喰い・共倒れの世界をもたらす。30年代の大デフレでは、保護主義や為替切り下げ競争によってはデフレ脱却が出来なかった。結局、足の引っ張り合いから失業の輸出となり、最後は第二次大戦で戦争需要を作り出した。
▼富の偏在がバブルを引き起こし、崩壊して恐慌になる。それを繰り返さないと成り立たない経済は異常だ。20世紀的価値観で成り立っている古いシステムを解体し、グローバル化時代に即した「新しいパラダイム」を創出するときが来た。一人勝ちの思想から、「あまねき富の均霑」の思想への転換が必要だ。まずは金融の暴走の元凶である”実体無き基軸通貨”ドルの清算が必要で、それを可能にするのは、日本も米国も痛みを伴うがドルの暴落(1ドル50円)だ。
▼新型デフレから真に脱するためには、”潰し合い”から”分かち合い”へと社会全体が舵を切り替えていくしかない。”三方一両損”に21世紀の共存共栄の道を見る。戦後日本が成長してきた集権的管理モデルは、経済大国になった時点で役割を終え時代遅れだ。21世紀にふさわしい日本経済の姿は、競争的分権モデルだ。それは日本という国民国家を形成する地域共同体(開かれた小国)あるいは地域経済が、それぞれ独自性をもって機能し、相互に切磋琢磨し、協力し合う状態である。それぞれの状況にあったスタイルで自己展開する共同体群によって多様性が構成される。
▼これまでのように国がすべてを背負って無理を続ければ国家破綻になる。「開かれた小国」時代における国家の役割は、主役である地域共同体が、荷の重いことや隙間を埋める機能を国家に権限委譲する。市民が、市民に近い地域が、国に何をさせるか決める。現在は、グローバル資本主義からグローバル市民主義への過渡期ではないか。

2013年11月24日 (日)

「新潮75―どうする超高齢社会」を読む

 「新潮75―どうする超高齢社会」は新潮45の11月号別冊で、編集長はビートたけし。

 30年後の日本は4割弱が高齢者になる。若い人には悲惨な現実が確実に来る。だが、逃げ切れる老人は勿論、他の世代も誰も真剣には考えていない。たけし編集長の言い方は冗談っぽいが真実だ。ポックリ保険や姥捨て山の復活でもしなければ社会がもたない。

 国にカネがないので年金も医療も介護もどんどん自己責任になっている。老人の働く場も少ない。個人もカネがなければ長生きも病院や施設で死ぬこともできない。子供と同居する老人が4割で1割の欧米より多いとはいえ減少傾向であり、子供にも介護する余力がなくなってきている。

 カネのない孤独な老人は自殺するか、「屋たれ死に」(河内孝氏)するしかなくなる。老人問題は欧米でも同じで、福祉社会の欧州でも財政難でサービス低下させざるを得なくなっている。またスイス・オランダ・ベルギーのような「合法な安楽死」の認知に向け動いている(三井美奈氏)。医療や介護の保険のない米国では、カネのない老人はもっと悲惨だが、NPOや自治体が支援する仕組みがあり、なんとか社会がもっているようだ(矢部武氏)。

 藻谷浩介氏の「『年金・介護・医療』危機脱出への処方箋」も興味深く読んだ。高齢者が受け取っている年金は、若い人が払い込んだ年金に毎年10兆円を補てんをしたものだ。高齢者は介護・医療の不安があるために、年金を消費せずに貯金するから、若い人にお金が回って行かず経済が縮小していく。であれば、補てんを止め賦課方式を厳正に適用し、年金の支給額の減少で困窮する高齢者を生活保護費で面倒を看ることにすれば、高齢者は貯金を使うはずだというのである。将来の生活が保障され不安が消えれば、貯金は消費に回るだろうが、生活保障の質と費用がどのように確保されるのかが問題だ。

 また介護施設については、費用の安い特別養護老人ホームは数が足りず、民間のケア付きマンションは金持ちしか入れない。そこで普通の高齢者が集まって住む、個室の確保されたグループホームが良いと言う。介護保険を使わなくとも入居者の生活保護費だけで食費・家賃・給料が賄えるという。健康や食事管理もできるので医療費の抑制にもなる。死に場所としても適切だ。独居に耐えられなくなった老人がいつでも移れるような体制があることが重要だと説いている。是非そうした施設を沢山作ってもらいたいものだ。

 黒川祥子氏が紹介している「夢のみずうみ村」という介護施設の運営方法にも感銘を受けた。従来の施設では、当人ができるそうなことでも介護者がぱっとお世話する方式で、その方が手間がかからず安全であるし、要介護度が重い方が施設は儲かるから改善する気はない。ところがこの施設では、生活力の回復、要介護度の改善をめざし、できるだけ手を出さず見守る介護、本人の意思を認め保証して行く体制、バリアを体験させ克服させる環境づくりなどユニークな取り組みを行っている。老々介護をし始めた自分としても、いろいろ考えさせられたことが多かった。

2013年11月12日 (火)

「里山資本主義」を読む

   グローバル市場に流入した投機マネーは、資源価格を不安定なものとし輸入依存の大量生産型産業を揺るがしただけでなく、国家の安全も危うくした。

  それに対し身近にある休眠資産を最新技術で再利用して食料・エネルギーの自活を目指すのが里山資本主義であり、これをマネー資本主義のリスクや歪みを補うサブシステムとして提案している。

  すでにオーストリアは脱石油・脱原発を掲げ、木を徹底利用して経済の自立を目指しており、日本でも中国地方で自活の試みが始まっている。そこには金では得られない豊かで楽しい暮らしや絆があると説いている。

   経済は今、基本的な方向を見直す時期が来ているようだ。里山資本主義という言葉が妥当かは別にして、本書が示唆するように日本の産業は、物質的な豊かさと安さを求め、そして投資マネーに振り回され始めた大量生産型産業から、人間らしい暮らしを求め自然や人との絆・地域や人の個性を大切にした少量多品種型産業・地域自立型産業への転換を目指すべき時だと思う。

  また藻谷氏が言うように、コストを価格転嫁できるようなブランドを創出し賃上げできるビジネスモデルを構築することこそが、デフレ脱却の本道だと言うのも納得できる。とても勉強になった。

(藻谷浩介+NHK広島取材班 2013 角川oneテーマ21)

2013年11月 6日 (水)

10月の読書メーター

2013年10月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1937ページ
ナイス数:133ナイス

仏の発見 (学研M文庫)仏の発見 (学研M文庫)感想
幼少期も現在も孤独と悲哀を経験したと言う二人が、自分の過去や作品を通して仏教とりわけ法然や親鸞について語る。二人は環境破壊や戦争を引き起こす現代の人間中心主義/科学的合理主義及びその背後にある、自然支配的で排他的なキリスト教的世界観に限界を見る。そして仏教の不殺生の戒律、大乗仏教の大衆救済思想、日本仏教の自然との共生思想、親鸞の悪人正機説等々に可能性を見ている。対談故に詳細はよく理解できないが、大きな構図は見て取れる。自分には宗教心はないが、人間が恣意で動かしている世界は滅びるという危機感は共有できる。
読了日:10月26日 著者:五木寛之,梅原猛
約束の地 下 (光文社文庫)約束の地 下 (光文社文庫)感想
物語は部下の不審死事件を中心としたミステリーモードになって一気に展開していく。そこに山の主のような巨大イノシシとの戦いが伴走する。クライマックスは息を呑む壮絶なシーンの連続だ。エンディングもホロリとさせる。人と人の絆の大切さ、親子の愛の深さ、人と犬の結びつき、自然の偉大さと人間の卑小さ、その自然を壊す人間、死のあっけなさ、死者への思い、残された者の哀しみ等々。盛りだくさんのテーマに対する作者の考えがさりげなく心に響き、大きな感動を呼び起こす。いい小説だった。2010年の大藪春彦賞受賞作。
読了日:10月19日 著者:樋口明雄
約束の地 上 (光文社文庫)約束の地 上 (光文社文庫)感想
主人公は環境省のキャリア。野生鳥獣保全監理センター八ヶ岳支所長に赴任してからの物語。いきなり二つの事件事故から始まり、その後も次々に事故が起こり、主人公とともに読む者も翻弄される。クマやイノシシによる農業や人間の被害。原因となった人間の環境破壊。動物保護派と害獣駆除派の対立。親の相克の影響を受ける子供たち。人間並みの感情を持つ狩猟犬たち。部下の不審な死。身近な死と共に生きる人間たち。無駄な死はない。山の動物たちを襲う新たな敵の発見。これらがどう収束して行くのか非常に楽しみ。シリアスなテーマながら面白い。
読了日:10月16日 著者:樋口明雄
(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)感想
同シリーズの第3弾で完結編。オバマ以降、一層ひどくなった貧困大国化が描かれる。政治家の口先やマスコミに騙されてはいけないと警告する。彼らはスポンサーである巨大多国籍企業や巨大銀行のために政策を決めるから、アメリカはもはや民主主義ではなくコーポラティズムだと断ずる。独占禁止法は解禁され、地域に根差した小規模産業を壊滅させ、1%の勝ち組が99%を奴隷のように収奪し使い捨てるシステムが完成した。これを世界に広げようとするのが自由貿易協定だ。すでにイラク、インド、韓国などが組み込まれた。次の標的は日本。
読了日:10月15日 著者:堤未果
ひまわり事件 (文春文庫)ひまわり事件 (文春文庫)感想
同じオーナーが経営する隣接の老人ホームと幼稚園で起こった事件を描く。前振りが長く少々辛抱がいるが、事件が起こってからは一気に読ませる。老人不在の福祉や子供不在の教育の在り方に対する問題提起であり、不正や嘘に対して声を上げない人々への挑発である。ちょっと枠からはみ出した入居老人であり園児であるが故に、事件に関わることになった主人公たちへの著者の温かい愛情を感じる。また、子供たちに対する「置き土産を残していく義務」を自分はどう果たすべきかを考えさせられた。「三万本のひまわりが咲く姿」を想像するだけで心が躍る。
読了日:10月1日 著者:荻原浩

読書メーター

« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »

お薦め本

  • 鈴木亘: 「財政危機と社会保障」
  • 波頭亮: 「成熟日本への進路」
  • 中野剛志: TPP亡国論
  • 増田悦佐: 日本と世界を揺り動かす物凄いこと
  • 古賀茂明: 日本中枢の崩壊

お薦めサイト

フォト
2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ