« 2013年12月 | トップページ | 2014年2月 »

2014年1月

2014年1月18日 (土)

「イギリスとヨーロッパ 日本とアジア」を考える

 昨日の市民講座で、木畑洋一氏の「イギリスとヨーロッパ 日本とアジア」という話を聴いた。「英国のEU脱退の可能性も取り沙汰されているなか、なぜ英国は欧州統合に距離を置くのか、その歴史的背景を探る。また、同じ島国として日本とアジアの関係について考える。」という二つのテーマだったが、後半のテーマについては余り良く分からなかった。

 英国とEUとの関係の歴史について丁寧な説明があった。なぜ英国は欧州統合に距離を置くのかという問いに対する答えは、「英国人にとっては、欧州よりも英帝国=英連邦や英語国=米国の方が近い存在だから」ということだった。

  60年代に、植民地の独立やEECの発展を見た英国は、経済のためにEECへの加盟 を申請したが、ド・ゴール仏大統領は、「英国は米国の『トロイの木馬』」だとして拒 否した。ド・ゴールが去った後、70年に3度目の加盟申請をしてやっとEC加盟が決ま った。

  1975年にECへの残留を掛けた国民投票が行われたが、残留支持票が反対票の倍あっ た。しかし、80~90年代の通貨統合や為替相場メカニズムの動きには消極的で、結局  現在もポンドの独立性を維持している。サッチャーの演説に見られるように、ヨーロ  ッパ共同体とは、独立した主権国家間の積極的な協力関係としか見ていない。世論も  ユーロ参加に対しては60%が反対しており、ユーロ危機後の13年には74%が反対した  。国家志向が強いのだ。あるいは世界に築いた帝国のプライドが残っているのだろう  か。

  1993年、EUが発足、EUは拡大し続けている。英国も加盟し続けているが、統合へ の消極的世論は根強く、欧州議会でもEU脱退を説く英国独立党が得票を伸ばしている 。小康状態だとは言え危機が続くEUも、EUと英国との関係も不安定でどうなるか、 まだ分からない。

 同じ島国だからといっても、英国と欧州、日本とアジアの関係は余りにも違いが大きい。前者は消極的だが、欧州の一員としての意識がある。一方、後者ではASEANはあるが、アジア市民という感覚は全くなく、統合への道は遠い。中国・韓国との間に領土問題や歴史認識問題があり関係は悪化している。日本の針路を考える上で、英国から何をどう学んだらよいのか皆目見当がつかないので質問してみたが、余りはっきりしなかった。それは自分で考えよということだろう。

 他の参加者から、日本でもめている近隣諸国との戦後の清算について、欧州ではどうなっているかという質問が出て、結局ともに敗戦国であるドイツと日本の比較の話になった。木畑氏から、ドイツは近隣諸国と和解のために主体的努力をしたが、日本はその努力を欠いた、との説明があった。

 その件に関しては、コーディネーターの山内久明氏から、日本は冷戦下で米国の傘の下に入ったために、アジアとの和解に積極的でなかったとの補足があったので良く理解できた。日本は戦後一貫して日米関係基軸外交を進めてきたので、アジアとの関係構築を疎かにしてきたのだ。英国は、経済的には独立性に固執しながらも、外交・安全保障政策では98年以降、対米協力一辺倒の姿勢から欧州共通防衛政策への転換をし始めている。木畑氏は、ここは英国に学ぶ必要はないといったが、私としてはこここそ学ぶべきだと思った。

 米国の政策自体がアジア重視に変わりつつある今、米国追随一辺倒は米国にとっても迷惑になってきているのだ。日本は外交的・安全保障的にも米国から自立すべきだし、一方でアジアとの協調関係構築を積極的に進めるべきだと思う。

 サッチャー元首相のいうように、経済的な協力の共同体と言えども、伝統や文化が違う国民のいる国民国家の主権はなお残すべきであり、国はその国民を守るべきだと思うのだが、経済共同体が、一部大企業のためのものとなり国民が虐げられるようなものにしてはならないことは当然だ。

 ただ共同体に加盟することは、人・モノ・カネ・サービスが自由に流通することであり、資本の論理に従って、安い労働者・モノ・サービスが入ってきて国民の生活を圧迫する可能性は大である。そこで国民をいかに守るかが国家の役割のはずである。

 その点では、川口マーン恵美氏の「EUとTPPの方向は同じ」として、「TPPにおける日本の立場は、EUでドイツが搾り取られているのと同じ立場」いう鋭い指摘の方が納得性が高い。今学ぶべきは、EUにおける英国よりもドイツだと思った。

2014年1月 1日 (水)

2013年12月の読書メーター

2013年12月の読書メーター

読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1292ページ
ナイス数:108ナイス

光 (集英社文庫)光 (集英社文庫)感想
章ごとに書いている視点が変わって真相が明らかになり、思わぬ方向に展開していくので、次が気になって本を置かせない。1章の衝撃的な津波直後の事件に対し2章の平凡な主婦の不倫。それらが3章で意外な形でにつながるところが、面白い。人は皆、多かれ少なかれ心に暴力的衝動や秘密の爆弾を抱えている。「いつ爆発するかと怯えながら、結局安泰に一生を終えるのと、爆発して家族もろとも吹き飛び、いまの生活が粉々になるのとでは、いったいどちらが地獄に近いだろうか」と主人公は考えたのだが、それは著者から読者への問いかけでもある。
読了日:12月27日 著者:三浦しをん

原発ホワイトアウト原発ホワイトアウト感想
現役官僚が原発ムラの実態を告発するために書いた小説。電力会社・政治家・官僚・マスコミが一体となって、自分たちの利益だけのために、フクシマの教訓を生かすことなく、原発の安全対策をないがしろにして国民を危険な状態に置く状況が描かれている。彼らの「悪魔のシステム」は想像通りだが、内側から見ている人間の言葉だけに重い。国民は彼らによって全く虚仮にされているのだが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる。日本人の宿痾であった。」と著者が言うように、国民にも責任がある。最後の展開は予想外で、しかもあり得る話なので怖ろしく感じた。
読了日:12月19日 著者:若杉冽

憲法改正に仕掛けられた4つのワナ憲法改正に仕掛けられた4つのワナ感想
安倍政権・自民党は、特定秘密保護法の次は憲法改正を狙っているが、苫米地氏は自民党の憲法改正案が非常に危険であるとして本書を緊急出版した。対米従属の自民党は、原子力推進・TPP参加・集団的自衛権獲得・極秘情報共有・PKOへの積極的参加等のアメリカの要求を丸呑みするために改正を進めているのだが、実は法案を任された官僚が、自民党も気づかないように過激なサンドバッグの蔭に罠を隠し、国会を飛び越えた総理大臣の指揮権を強め、実質的に官僚による統治を進めて国民から主権を奪おうとしていると警告している。恐るべき官僚たち!
読了日:12月18日 著者:苫米地英人

新世紀のビッグブラザーへ新世紀のビッグブラザーへ感想
日本人に警鐘を鳴らすために書いたという近未来小説。極東戦争が起こり日本は全体主義独裁者に支配され、極度に情報統制された管理社会になるが、主人公らがこれと戦うという内容。小説ながら現実の特定の名前が分かるように書かれており、著者が何を批判しているかすぐ分かる。南京大虐殺や従軍慰安婦等、中国や韓国によるでっち上げに乗せられた日本の進歩勢力やメディアの人権擁護を信じると怖ろしいことになるぞという警告。しかし著者の目線とは逆に、官僚に乗せられた日本の保守勢力が恐ろしい情報統制社会を築こうとしているのは皮肉だ。
読了日:12月8日 著者:三橋貴明

太極拳のゆとり―柔らかく静かに (1980年)太極拳のゆとり―柔らかく静かに (1980年)感想
2005年に亡くなった楊名時太極拳の師家55歳の時の1980年の著作。日本で太極拳を教え始めた時から20年目迄の経緯や様子が伺える。「健康であってはじめてゆとりのある考えが生まれ、他人のことにも思いを馳せることが出来る」という言葉に、中国との交流も含め、何よりも「和」を大事にしている姿勢が表れている。健康のために、自分も太極拳を続けているが、この本では、聖典と呼ばれる「太極拳経」の「通釈」と、普段の稽古に直結する「稽古要諦」が一番参考になった。精進したい。
読了日:12月6日 著者:楊名時

読書メーター

« 2013年12月 | トップページ | 2014年2月 »

お薦め本

  • 鈴木亘: 「財政危機と社会保障」
  • 波頭亮: 「成熟日本への進路」
  • 中野剛志: TPP亡国論
  • 増田悦佐: 日本と世界を揺り動かす物凄いこと
  • 古賀茂明: 日本中枢の崩壊

お薦めサイト

フォト
2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ