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2014年10月

2014年10月14日 (火)

「パリ不戦条約」について

 文芸春秋1409で読売新聞の渡邉会長の「安倍首相に伝えたい『わが体験的靖国論』」を読んだ。個人的には好きではない人物だが、意外なことに、教えられること、共感できることが沢山あった。

 渡邉氏の趣旨を要約すると、昭和戦争は侵略であったと認め、そのシンボルである靖国神社の公式参拝をやめるべきだと言う。A級戦犯の分祀をするか、祭神の名義や特定の宗教と関係のない追悼施設を作るべきだとしている。私も全く同じ意見だ。

  氏は、昭和戦争は軍部の無謀な戦争拡大によって大戦争になったが、その戦争拡大が1928年に日本が調印した「パリ不戦条約」の戦争放棄に違反したが故に、日本の戦争責任を問われたのだという。これは初めて知ったことだが、なぜそれ以前に帝国主義戦争を展開した列強の戦争責任が問われないのかという疑問がこれで解けた。

  パリ不戦条約とは、欧米の列強による帝国主義戦争に終止符を打とうという国際世論の盛り上がりを受け、1928年に締結された「戦争放棄に関する国際条約(通称ケロッグ=ブリアン条約)」(Wikipedia)だという。その第一条に、日本憲法第九条と内容的に同じ「戦争放棄」が謳われている。これが普遍的な世界共通の法規範になっているのだ。

  但し、日本による不戦条約の空文化を踏まえ、1945年の国連憲章では、「戦争放棄」ではなく「武力による威嚇または武力の行使」を原則禁止するものとなっている。日本国憲法はその両方を踏まえたものとなっている。

 では戦後に、英米仏やソ連が行った軍事行動は、国連憲章に違反していないのか。その時、盾になっているのが、国連憲章第51条の「個別的または集団的自衛の権利」である。国連加盟国に対する武力攻撃が発生した時に、国連安全保障理事会が必要な措置を取るまでの間の権利である。ここでは、集団的自衛権が侵略の口実となっており、空文化している。これについては、別の機会に考えたい。

2014年10月 2日 (木)

2014年9月の読書メーター

読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1328ページ
ナイス数:73ナイス

ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫)ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫)感想
うだつの上がらない定年間近の二人の役人が、実質業務のない天下り組織に転属されたが、「極楽」に馴染めず「仕事」を始めたという物語。もう一人の主役が彼らの教育係の女史。官僚たちの利権や無駄遣いに腹を立てている人間にとって、三人の活躍は実に痛快。また随所で笑わせてくれ、著者の新たな一面を発見した。彼らは、社会的地位や金の軛から解放されたとき、人は如何に強くまた幸福であるかを教えてくれる。だから定年後は楽しいはずなのだ。三人とも家族から解放されている所が一般的ではないが、しかし楽しく生きる仲間ができた。
読了日:9月29日 著者:浅田次郎


民族問題入門 (中公文庫)民族問題入門 (中公文庫)感想
1994年刊行。20年前に書かれた本だが、今なお世界で火を吹いている民族紛争を理解し考えるための幅広い視野と鋭い視点を与えてくれる。著者が言うように、少数民族が多数民族の価値に強制的に同化させられることなく個別の価値を私的に保持する自由を認めつつ、公的には超民族的な普遍的理念を共有することで民族・人種差別をなくし、民族間の経済的・社会的な格差のない世界を目指したい。そのためには、民族間の交流と話し合い、国連の平和維持活動が不可欠であるとしているが、現実は依然厳しく、政治家や知識人の責任と期待は大きい。

 自由・平等を理念としたフランスが植民地支配できたのも、社会主義を理念としたソ連が少数民族を抑圧したのも、根底に人種主義があり、結局それが行き詰ったのだと言える。そして帝国や連邦の抑圧から解放された少数民族が文化相対主義や反人種主義を主張するのは当然だ。が、行き過ぎたナショナリズムも強制的な普遍主義も排除されねばならない。著者も、民族対立の根底に経済的な格差があることを認めており、それが新しい民族問題である移民・難民を生んでいると指摘している。佳久子区における経済の繁栄と雇用の確保が根本政策となる。
読了日:9月23日 著者:山内昌之

蒼煌 (文春文庫)蒼煌 (文春文庫)感想
日展の入選作が審査員の系列で占められたという事件を想起させる画壇の闇を描いた小説。芸術院会員という地位を得て審査する側に回れば、金も権力も得られるので、会員に当選するために審査員の買収合戦が繰り広げられる。そうした業界の中にいないと、いくら絵が上手くても飯は食えないから、世俗的な成功も意識せざるを得ない。美術好きの人間にとっては何とも残念な世界だが、金が支配する世の中の常。著者は、そんな世界を描きながらも、それとは対極の「ただ絵を描きたい」という純粋な画家の世界も垣間見せ、エールを送っている。
            読了日:9月19日 著者:黒川博行

民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)感想
民族と国家をめぐる問題は多種多様だが、著者は概念の整理・事例比較と類型化・軍事紛争に至る前の処方を試みている。余りにも膨大な内容を新書で扱っているので、全体を概観しただけの中途半端な感じは否めないが、勉強にはなった。近代国家と民族は1対1対応しておらず多民族が国内外に分散しているが、民族間に経済的・社会的格差があると、民族間に恨みや妬みが生じ紛争に繋がる。現在ではグローバリズムに対抗して各国に台頭してきた狭いナショナリズムが問題。軍事的衝突に至る前の、歯止めの初期対応が大事とは当然すぎる結論。
読了日:9月4日 著者:塩川伸明

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