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2015年2月 1日 (日)

2015年1月の読書メーター

読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1199ページ
ナイス数:147ナイス

(051)父という病 (ポプラ新書)父という病 (ポプラ新書)感想

 
 父親の存在感が希薄な「父親不在」の時代にあって、父親の役割の重要性を説く。子どもが母親とさえ不確かな関係しか持てない現代の病理を明かした「母という病」の続編だが、実は「母という病」は父親不在と表裏一体だという。母親は、乳幼児期の愛着形成により子どもの存在基盤となるが、父親は、成長期には母子分離を助け、世の中の掟や遊びを教え、思春期には社会への導き手となって、子どもの健全な成長を促す。父親不在による様々な母子関係・父子関係の病理を、具体的な事例をあげながら解説している。著名人の例が多く興味深い。

 身内のトラブルで必要があって手に取ったが、もっと早く出会っていればと思った。父親不在のため母子分離できていない女性を妻にしてしまった夫の不幸、しかし離婚すれば父親不在となって母子分離できない子どもをつくってしまうという自己矛盾と罪の意識。冷めてしまった夫婦関係と気を遣って両者に愛情を求める幼ない子ども。一生消えることのない子どもへの愛情。一度傷ついたプライドは元に戻しにくいが、すべて相手が悪いわけではないはず。完璧な人間はいないのだから、受け入れ許してやって欲しい。そんなことを考えさせてくれた。

読了日:1月25日 著者:岡田尊司

 成長戦略であるアベノミクスは、時代錯誤だと主張し、その理由を歴史と統計に依りながら解説。物的な豊かさと完全雇用を目指し、生産性上昇を上回る雇用増加を可能にする高成長が求められたが、成熟化して物的な豊かさに満足感が得られなくなり、高生産性の機械工業の減少、低生産性のサービス業の増加という産業構造の変化が起こって低成長になった。更に資源制約・財政悪化・高齢化・格差拡大の問題も深刻化する中、生産性上昇を生活の質の向上に活かせる経済社会を構築すべしという。問題は明確になったが、どう可能なのか先は見えない。
 結局、政府も企業も国民も目先の自分の利益だけに目を奪われ、日本の将来を誰も真剣に考えていない。問題を放置したら将来は大変なことになることは分かっているのに、若い人も声をあげない。将来の社会はどうあるべきか、その目標に沿って何をすべきか、生じる痛みをどう分担すべきか、議論もしないし共通認識も持てない。メディアも問題の重要性を国民に十分に知らせないし議論もけし掛けない。国民一人ひとりには問題分析と政策提案の力はないから、やはり政治家や専門家による提案が重要だと思う。勿論、選択する責任、選択した責任は国民。

読了日:1月19日 著者:武田晴人

 久し振りに感動の涙を流させた名作。冤罪ながら藩主より十年後の切腹を申し渡された藩士戸田秋谷のその日までの生き様を描く。弁明することなく死を受け入れ、与えられた仕事をこなしつつ、最後まで自分の命を懸けて人に尽くそうとする。その強さ、優しさに心を打たれる。時代は違えど現代に通ずる派閥争い、パワハラ、私利私欲に走る役人、強欲な商人、虐げられた人々の抵抗等を描きながら、友情・家族愛の大切さ、上に立つ者のあるべき姿をしっかりと伝えている。冤罪の謎解きがミステリーのように巧みに織り込まれており読み手を休ませない。
 印象に残った二つの深い言葉。「疑いは、疑う心があって生じるものだ。弁明しても心を変えることはできぬ。心を変えることができるのは、心をもってだけだ。」という秋谷の言葉と、「未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。」と秋谷に語った慶仙和尚の言葉。

読了日:1月14日 著者:葉室麟

 著者は、30年間日本経済を分析してきたアナリストで、現在は日本の文化財修理会社の社長。日本の文化、日本人の勤勉さや優しさは評価しつつも、日本の一人当たり購買力平価 GDPが世界25位と低く効率が悪いのは日本の経営者の責任と批判。経営者に必要なのはコンセンサスの重視ではなく、「数字」に基づいた分析と冷静な判断、不毛な議論に惑わされない決断力だという。「一部の高い評価を全体の評価にこじつける」と批判する著者自身が、一部の低い評価を全体に敷衍している感もあるが、経済低迷の日本にとって重要な視点には違いない。
 「不都合な現実から目を逸らし、都合のいい話をくっつける」「客よりも供給側の都合が優先される」等も指摘しているが、一般論ではないが経験上頷ける。日本経済の復活には観光立国が切り札という主張も、数字で根拠を明らかにしている。日本の観光業はアジアの劣等生で、特に遅れているのが文化財保護。政府予算が少ないだけでなく、客を楽しませる努力が不足。文化財ビジネスの波及効果は3.5兆円であり、経済効果も雇用効果も大きいという。最後は、自分の仕事の意義をしっかりアピールしている辺り、さすが英国ビジネスマンである。
読了日:1月6日 著者:デービッド・アトキンソン

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