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2015年3月 4日 (水)

2015年2月の読書メーター

2015年2月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:939ページ
ナイス数:129ナイス

九年前の祈り九年前の祈り感想

   読了日:2月24日 著者:小野正嗣
 文芸春秋にて、芥川賞選評と共に読む。
同棲相手に逃げられ郷里の町に戻った主人公さなえの、自閉的な息子に対する愛情と悲しみを描く。息子の「引きちぎられたミミズ」のような抵抗に疲れ果てて見る子捨ての幻視。だが解放されたくても、手を放すことはできない。九年前のみっちゃん姉の息子への愛と祈りの記憶に導かれ、息子を抱き愛おしむことで悲しみを乗り越える。
 作者の伝えたいことは良く分かるのだが、私には今一つ、村上龍や川上弘美のいう「切実さ」も、小川洋子のいう「世界の片隅に潜む土地の力」も感じられず物足りなかった。

 「引きちぎられたミミズ」の幻視が言葉だけで繰り返し語られることで、あるいは郷里の余りに優しく温かいおばちゃん達が登場することで、「切実さ」が打ち消されているように思われた。
 世界に繋がっても、恐れも知らず物おじもしない郷里のおばちゃん達のパワーが「土地の力」だったとしても、現実の彼女たちはもっと口悪く、主人公にも辛く当たるのではないか。高樹のぶ子のいうように「陰湿な臭いが消えた分」、小説としては弱くなったのかも知れない。
  読了日:2月19日 著者:佐藤優
 相国寺禅僧を対象に、危機的状況に陥っている人間のサバイバル(救済)についてキリスト教の視座から連続講義したもの。
 著者のいう危機とは、世界大戦や原発事故を生んだ近代合理主義文明への疑念であり、野蛮なファシズムへの回帰の動きである。そして救済をトータルに考える著者は、宗教の力が如何に世界の政治・経済・社会に影響を与えているかを豊富な知識で解説し、最後に宗教団体はファシズムに対抗する砦として、民主主義を担保する根本である、とまとめている。話が余りに幅広いので理解しきれないが、宗教と政治の深い関わりを知った。

 宗教の知識がないと現在の世界情勢が読み解けないのも事実だが、宗教の語る物語を素直に信じられない私としては、なぜそこに命を捧げられるのかを知りたかった。しかしこの本では、「自分がなぜキリスト教徒になったのか説明できない。」で終わる。
 合理的に説明できないのが宗教だから仕方ないが、自分の宗教のために自分の命を捨てることも他人の命を奪うこともできる人たちが争っていることの方が、合理主義以上に問題のようにも思える。
 近代と共に生まれた民族もナショナリズムも、信じる者にとっては宗教だが、国家・官僚にとっては道具にすぎない。

  読了日:2月9日
 ピケティの特集で、「21世紀の資本」の概要や彼の立ち位置、彼への批判が簡潔に紹介されている。
 米国流の新古典派経済学をベースに、各国・各時代の膨大な税務データを分析して格差拡大の実態を明らかにし、[放っておけば、今世紀中には18~19世紀の欧州のように、相続財産が人生を左右する世襲型の超格差社会に戻る。」と警告する。
 経済学としてはまだ不十分な処が多いようだが、成長理論に陰りが見えてきた現在、分配問題に焦点を当てたことが話題のようだ。
 NHK「パリ白熱教室」を観ているが、彼の講義は明快で分かり易く魅力的だ。
 r>g。すなわち「資本収益率は常に経済成長率をつねに上回る」ため、資本を多く保有している富裕層にますます富が集中するという主張に対し、確かに過去の資本収益率は4~5%だが、将来もそうなるという理論付けがないと批判されている。 
 しかし現実に拡大している過大な格差が、経済も社会も破壊し民主主義を足元から崩すので、市場メカニズムに任せないで適度な管理が必要だ、という彼の主張には共感する。 
 格差是正の処方箋として世界的な資本課税の導入を提唱している。簡単ではなさそうだが、理想に向け努力するのが筋だろう。

東京プリズン東京プリズン感想
  読了日:2月3日 著者:赤坂真理
 
 アメリカの高校へ留学させられた少女マリが、東京裁判に納得できない教師から「天皇の戦争責任」を立証する立場でディベートをさせられるという小説。
 東京裁判のやり直しのような最終章は圧巻。神がかったマリの主張を通して、日本人にとって檻の中のタブーであった「天皇とは」、「アメリカとは」何なのかを読者に問いかける。
 イライラさせる前半の、時間や私を超越したすべてが夢のような不思議な物語は、すべて最終章のためだったと納得。天皇を救いつつ責任を問うマリの主張は理解を超えているが、アメリカに一矢報いた所は共感。
 
 戦争に負けたのは仕方ないが、自分を負かした強いものを気持ち良くして利益を引き出したら、それは娼婦だ。」と強者に媚を売る日本人を断罪する所も共感。これからは誇りを持って強者に対しても、過ちは過ちだと物申すべきだと。
 誤った神を信じているという理由で自分の信じる「神の名のもとに戦争をする」人類の愚かさ。同じ人の子とは、同じ神の子ではないのか。もし神がいるとするならば、自分の信じる神の子のみが救われるという宗教よりは、この宇宙、この自然、この人々のすべてが神だというマリの主張に組したい。

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