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2015年5月 8日 (金)

2015年4月の読書メーター

2015年4月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:960ページ
ナイス数:198ナイス


乳と卵(らん) (文春文庫)乳と卵(らん) (文春文庫)感想

 
 大阪から遊びに来た姉の巻子とその娘緑子と私の三人の女性が過ごした夏の3日間を描く。離婚したホステス巻子、初潮を迎えた緑子、未婚の私。それぞれが抱える女性特有の悩み、哀しみ、そして母と娘の難しい関係がテーマ。男には知りえない世界を覗かせる。

私が見た二人を描く文章の間に、緑子の告白の文章が挟み込まれ、物語を二次元的に展開させるところが巧み。明け透けで饒舌で切れ目なく続く、大阪のおばちゃんのような私の語りも独特で新鮮だ。母娘の間がこじれた理由を徐々に明かし、最後に一気に収束させて読者の心を穏やかにする。
 こじれた人間関係を修復するには、互いが思っていることを正直にぶつけ合い、涙を流し合うしか無いようだ。玉子を自分の頭に叩きつけるクライマックスのシーンが面白い。やはり、叩きつける場所は相手の頭ではなく、自分の頭だ。

読了日:4月29日 著者:川上未映子



 原本1983年刊。訳書2000年刊。著者は英国の哲学者・社会人類学者。佐藤優氏の推薦本。 

 著者は、採集狩猟・農耕・産業社会の三つの社会を比較し、ナショナリズムの根源が産業社会の構造に根差すことを解明。政治的・経済的・教育的不平等が生じる産業社会の初期において、それは暴力的に発生するが、原理自体は産業社会における普遍的な政治規範であり、成熟化すれば民族対立は弱まると考える。

 そこで教育を独占する国家が文化的同質性を促進することを重視する。紛争激化の今なお学ぶことは多いが、産業社会の限界に触れないのが限界か。

 社会組織の基礎に、読み書き能力・教育の普及度、専門職の流動性、文化の標準化度を見た所が新鮮に映った。著者の言うように、人類の歴史が社会的エントロピー増大の方向に進むとすれば、もっと国際主義が発展しても良さそうだが、資本だけが国際化して国家と国民は逆方向に進んでいる気がする。

 資本が国家を超え始めた現在、著者の言う産業社会は大きく変質してしまったのではないか。多民族国家内における民族間の不平等と同時に、民俗国家間の不平等が問題になって来ているのではないかと思う。

 原本のNATIONを民族と訳したため、国民と民族(政治的エスニシティ)との区別が分かり難くなってしまっているのではないか。「多民族からなる国家は文化を共有する国民を創造しなければならない」という主旨だと思うが、「国家が民族を作る」というと「多民族国家」という言い方が出来なくなり不便である。
 
読了日:4月24日 著者:アーネストゲルナー


 
 記憶障害の老数学者「博士」、家政婦の「私」、その息子「ルート」の三人の生活とそこで育まれた友情を描く。

 博士の性格付けが素晴らしい。社会的には弱いけれど純粋で限りなく優しい性格、書斎にこもってひたすら数学の問題を解くという静かな生活に、私・ルートとともに、読者もまた癒され心地良い世界に引き込まれる。

 完全数や三角数といった数学の不思議で美しい世界の描写も、詩的で魅力的だ。そして博士と息子を結びつける阪神タイガースと江夏豊が、やや特異な物語をリアルにしまた面白くしている。読後は清々しい気持ちになれる。

 「実生活の役に立たないからこそ、数学の秩序は美しいのだ」と博士は言う。決して金のためでなく、秩序を発見するためだけに、無我夢中になって問題を解いている博士の姿もまた美しく感じるのは、人間にとって大切な何かを思い起こさせるからだろう。
読了日:4月21日 著者:小川洋子


 
 5篇の短編集。5人の主人公達が皆、同じ伊良部という精神科医にかかって問題を克服する話。

 好奇心旺盛で物おじすることなく、子供のようにふざけ、患者の真似をしようとする伊良部の行動は、患者の深刻さと対照的で笑いを誘うが、その変人医者に、患者はなぜか心を開き気づきを得て治ってしまうのだから、読者も癒され心温まる。

 競争心・適性・適応力・プライド・良心など、誰もが抱えているような精神的な問題を、典型的な職業に落とすことで明快に浮き彫りにして見事だが、途中で筋書きが読めたり、結末がきれいすぎるのがやや物足りない。

 最初の「空中ブランコ」は、原因も問題自体も最後まで隠されており、興味が持続するが、途中から簡単に筋書きが読めてしまうのが残念。他の4篇は、最初から見えている身体的症状の原因が徐々に明らかにされ、問題が解決して行く過程が興味深く面白い。

 特に伊良部の可笑しな行動のアイディアは抜群。短編ゆえにあまり複雑化出来ないのが宿命だとは思うが、いずれにしても伊良部の変わった行動が解決のヒントになっている点で、ややパターン化してしまっているところが気になる。
読了日:4月6日 著者:奥田英朗

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内容がおもしろいので、読もうと思ったが、行間がせますぎ、読みにくいこと限りなし。
改善を求む。

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