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2015年10月 8日 (木)

2015年9月の読書メーター

読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1077ページ
ナイス数:181ナイス



サービス文明論: 「多様性」を支える時代が始まる■ 坪田知己 
  
サービス文明論: 『多様性』を支える時代が始まる


 本書は、「閉塞感を濃くしている工業文明から次の文明への橋渡しの構想を描いたもの」であり、脱産業社会を35年前に描いたA.トフラーの「第三の波」を踏まえつつ、その後の変化を取り入れながら脱産業社会をサービス文明として描く。 

 それは、「特定のお客様へのサービスにより、感謝(対価を含む)を得て、その繰り返しで信頼を醸成していく社会」であり、タイムシフト・連携・多様化・特定顧客志向・分権化・分散化・利他主義・関係の価値等の特徴を持つという。

 目新しさはないが、様々な動向をサービス文明という軸でまとめた点が新しい。

 サービス文明はこれから築いていくものであり、「工業文明が不特定多数への商品サービスの提供を『市場での競争』に委ねたことを反省し、利己主義・利益優先の悪夢から脱却することを目指す」というのだが、資本主義がどう変わるのかについては触れていない。

 また「作る」時代から「ニーズに答える」時代への変化に伴い、主導権は企業から消費者に移るので、働き方も教育もメディアも産業も変化し、最強の企業は「顧客の代理人」になるという。

 大きな動向は正しいとしても、中心となるサービス産業は、一般的に生産性が低いため、所得の不平等・雇用の縮小・財政の赤字のトリレンマが残されると言われるが、答えはない。


読了日:9月20日




明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい
■ 
樋野興夫 
  「
明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい


 著者は順天堂大教授でがん哲学外来理事長。

 癌になり陥る鬱的な症状を解消するために患者の思考を前向きに変える「言葉の処方箋」を綴っている。

 「命より大切なものはない」と考えると、死におびえて生きることになる。
”命は「命より大切な自分の役割や使命を果たす」ために与えられたのだから、自分の役割を見つけてそこに全力を尽くせば幸せになれる。

 人は人によって癒されるのだから、犠牲を払って他人のために何かをしなさい”と説く。本書のタイトルに惹かれ読んだが、人間の生き方の根源に触れる感動の言葉に満ち溢れていた。

 以下、気になった言葉のいくつか。

●他人と自分を比べない。昔の自分と今の自分を比べない。
   悩みの多くは、比   較から生まれる。

●コントロールできないことに一喜一憂しても疲れるだけ。
  得られるものは極めて少ない。

●いい人生だったか悪い人生だったかは、最後の5年間で決まる。

●人は苦しみながら頑張る姿に感動する。

●人は説得するものではなく、その気にさせるもの。

●人間に必要なのは正論より配慮、

●必ずしもよい師やよい友がえられるとは限らない。
  だがよい読書は誰にでもできる。


読了日:9月15日



 
文藝春秋2015年9月号特装版 (文春ムック)「文藝春秋2015年9月号」


■本号では、ドイツのEU政策に関する2件、安倍政治に関する2件の記事が面白かった。

●E・トッド:ドイツ帝国の指揮下で、欧州はローマ的普遍主義の南とルター派的権威主義の北に分裂しつつある。ギリシャが離脱すればユーロは終わる。

●塩野七生:敗者の立場に立って考える感受性のないドイツは、他民族からなる共同体のリーダーになれない。自己制御も不得手。

●保坂正康:安倍首相主導の政治的な「主権回復の日」式典への天皇出席要請は皇室の政治利用で、極めて危険。

●古賀誠:日本が戦争に参加できる国になるという怖さがある。


■佐藤優氏が「ベストセラーで読む日本の近現代史」の中で触れている又吉直樹『火花』への批評の鋭さ・深さに感動。

 長い間マイノリティでありその心情を深く知る徳永がマジョリティに近づいた時の、自己が引き裂かれそうになる内的世界を、マジョリティである神谷に理解可能な言語で表現することの難しさ、両者が理解できない現実を言語化することに成功したと言う。

 それを佐藤氏は、又吉氏とともにルーツである沖縄人の内的世界に重ねる。

 ふと現在の沖縄人の苛立ち・怒りを想い、紹介されている又吉栄喜『豚の報い』を読みたいと思った。

■速水融氏(慶大名誉教授)の「日本の人口減少、ちっとも怖くない」も勉強になった。

 出生率・死亡率の低下は、近代化に伴う自然の流れ。人口減少を逆手に取れば、生活に余裕・文化成熟。

 まずは経済最優先の価値観脱却が必要。問題は人口よりも人口過密度で適正規模は7千万~8千万人。

 但し日本は「減り方」が速すぎるので歯止め必要。社会進出した女性の出産・子育てしやすい環境整備が重要。

 地方の人口減少と都市への集中も問題。地方の中核都市やその周辺都市の再生が急務。

 核家族形態も少子化の原因。三世代同居家族への見直しも。

読了日:9月13日 著者:




新自由主義の自滅 日本・アメリカ・韓国 (文春新書) 菊池英博 「新自由主義の自滅 日本・アメリカ・韓国」


 新自由主義(グローバリズム)が如何に恐ろしいかを徹底的に解説。それは米国の金融界・巨大企業に富を集中させるための仕組みであり、彼らが政府を支配しているが故に、米国自体が弱体化し、それに支配された韓国も衰退した。

 対米隷従の安倍政権も新自由主義路線で日本を破滅させようとしているという。

 一方で、水野氏のような「ゼロ成長論者」も批判。投資による経済成長なくして福祉社会は実現できず、またアベノミクスの緊縮財政・金融緩和・規制緩和では経済成長できないことを詳しく説明している。

 非常に分かりやすく勉強になった。

 日本をデフレにして日本の余剰資金で米国債を買わせるという日本財布論。日本農業を破壊して市場独占し食料で日本を支配しようとするTPP。
 
 成功事例がないトリクルダウン理論を掲げ、市場原理主義によって累進課税の否定・解雇の自由化・国民皆保険の破壊などを進めるのが新自由主義の中身。

 著者が冒頭で紹介している世界的に著名な投資家ジム・ロジャーズの言葉が恐ろしい。「安倍首相は『日本を破滅させた男』として、歴史に名を残すでしょう。」
 
 国民の金融資産を海外に流出させている長期デフレの主たる原因は「民間も政府も投資不足」。政府が積極財政政策を採っても日銀と協力していけば金利が上がる心配はないという。

 成熟社会で投資対象が見つかるのかどうかが心配だが、「国土強靭化」と「国土刷新計画」によって生まれるとしている。

 それが経済全体に波及するのかという疑問には答えていないが、日本政府は公共投資の乗数効果を故意に低く見積もっていると批判している。

 ゼロ成長論が根拠にするゼロ金利は永遠に続くものではなく新自由主義の暴走によるものという説明に希望。

読了日:9月7日

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