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2016年2月

2016年2月 2日 (火)

2016年1月の読書メーター

読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1194ページ
ナイス数:199ナイス


戦争する国の道徳 安保・沖縄・福島 (幻冬舎新書)■ 小林よしのり,宮台真司,東浩紀
      「戦争する国の道徳 安保・沖縄・福島」


 東氏が司会の鼎談。対立していた保守の小林氏とリベラルの宮台氏が共闘するという興味で読んだが、かなり刺激的。

 ともに暴走する極右安倍政権、同時に護憲派左翼を現実無視のタテマエ主義だと批判。

 九条平和主義は戦争を引込む安保=沖縄米軍基地=対米隷属に支えられているという矛盾。これを解くのは重武装中立しかない。

 日本は戦争する国になってしまったが、これは日米安保に甘え怒りを忘れた国民の責任である。日本に道徳はなく損得しかないのか。今こそ連帯して国民を舐めきった政治家に激怒せよと説く。

 勉強になったし趣旨にも賛同。

 学ぶことは多かったが、特に二つ挙げる。

 一つは、現代の世界の特徴。昔と違い今は、身体=社会はグローバル化で一体だが、意識=国民国家はバラバラ。

 そこでの人間の生き方は二つ、伝統や文化=アイデンティティを大切にするか(コミュニタリアン)、経済や社会=フラットなグローバル化でいいとするか(リバタリアン)。

 だが国民国家を支える共通感覚が無くなってきているいま、日本人が「日本人らしさ」を取り戻すという設定は基本的にもう無理ではないか、ということ。

 もう一つは国際関係で重要な手打ち。双方が滅亡するまで殺しあう悲劇を避けるために、納得してはいないが敢えて「そういう話にしておく」と相互拘束する協定。

 蒸し返さない約束だから、忘れないよう確認し続けたり、異論への説得の営みが重要。

 「信仰の自由」もそれぞれの超越を相互に絶対的に尊重する手打ち。

 国民国家の主権の概念も宗教戦争の悲劇を避けるための宗教的国家同士の手打ちだった。それを無視した米国の中東での政権転覆や指導者抹殺が、世俗的最高性(主権)を認めない反世俗主義ムスリムによる反逆を招いた、ということ。

読了日:1月31日
 


沖で待つ (文春文庫)■ 絲山秋子 「沖で待つ」


 第134回芥川賞受賞作。
 主人公の女性と同期入社の男性との社内の恋愛では なく友情の物語。

 会社生活を送った人間にとっては懐かしいような、職場や営業現場の様子がリアルに描かれているが、同期の気安ささながらに、くだけた会話が多い文章で読みやすい。

 「家族や恋人に見せたくない秘密を死んだ後どうするか」というやや軽いテーマだが、短篇にはピッタリ。キャラ設定とも合わせ全体をユーモラスに仕上げている。

 文庫に同時掲載の短篇「勤労感謝の日」は、嫌な見合いをした女性の話だが大いに笑わせてもらった。
 絲山さんのユーモア・センスに脱帽。

読了日:1月24日




生涯健康脳 こんなカンタンなことで 脳は一生、健康でいられる! (いきいき健康シリーズ)■ 瀧靖之生涯健康脳 
 ̄   こんなカンタンなことで 脳は一生、健康でいられる! 」



 著者は東北大学加齢医学研究所教授。

 本書は世界最先端の脳画像分析による認知力・遺伝子因子・生活習慣等の関係の研究成果。

 認知症は自然な老化現象ではなく、脳の血管や異常蛋白質の蓄積による病気。
 人の脳・認知力・病気等は70%が遺伝要因だが、30%の生活習慣を変えれば変わる。何歳からでも海馬の神経細胞は増殖する。という事を初めて知った。

 健康な脳をつくるには、前頭葉・海馬を刺激すること。有酸素運動・睡眠・知的好奇心・新しいこと・楽しいこと・音楽などが良い。飲酒・肥満は要注意。既知の内容だが習慣化するのが難しい。

 読書メーターでレビューを読んだり書いたりすることは、知的な好奇心を満たすし、有酸素運動は、ウォーキングや太極拳で習慣化できているが、どうも睡眠時間が不足しているようだ。

 睡眠は認知症の原因物質を洗い流すし、睡眠時間が短いと、体にストレスがかかり、海馬が委縮して脳の老化が速いそうなので、気を付けなければならない。

 また、常に新しいことに挑戦したり、デュアルタスクを意識的に心掛けよう。

読了日:1月20日



色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年■ 村上春樹 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年


 親密だった高校時代の仲間から突然存在を否定され、心の傷を抱えたまま社会人となった主人公つくるが、ようやくその真相を確かめるべくかつての親友を訪ね歩くという物語。

 ミステリー仕立てになっており徐々に真実が明らかになっていく展開は緊迫感があり、最後の親友と再会するところまでは良かったが、その後はトーンダウン。

 結局年上の恋人沙羅にはすべてお見通しだった。人の心と心の結びつきに完璧はなく、自分の正直な感情を抑制すればいつか壊れる。感情をぶつければお互いに傷つくが、そこからしか本当の結びつきは生まれないと。

 「人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。それが真の調和の根底にあるものなのだ。」

 自分には個性がないとか、価値がないとかいう自信喪失の悩み。抑えきれない性的な夢想への自己嫌悪、自分の意識の内奥を見透かされたのではないかという恐怖、自分の正直な気持ちを言えない哀しみ、常に自分を隠し距離を置いた人間関係のむなしさなど、ここに描かれている主人公の悩みは、誰しもが若い頃に経験することであり、リアリティを感じる。

 そうした感情の抑制ゆえに、完璧に見え幸福感に溢れていたグループが崩壊する宿命にあったことは理解できたが、自分を踏み台にした仲間の女性を赦す理由は、なんとも理解しがたい。


読了日:1月10日



中国的建築処世術■ 東福大輔,市川紘司 「中国的建築処世術

   
 世界で建設中の高層建築の80%は中国という。

 圧倒的な人材不足故に、日本の多くの設計者・施工者・開発事業者が進出しているが、本書はそうした人々のために、日本とは異なる中国建築のルールや慣習をまとめたもの。

 実務的なことから歴史的文化的なことまで網羅されており役に立つ知識が満載。

 手柄を求める政治家の介入やトップが全てを決める発注体制、賄賂やキックバックなど、困難な側面も多々あるが、日本よりデザイン能力や大胆な計画の発想を発揮する可能性に満ちていると著者は締めくくっている。

 関係者にとっては必携の参考書だ。

読了日:1月3日

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